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澤井良輔の人生を一変させたセンバツ・PL学園戦での一発「僕は運がよかっただけなんです」 (4ページ目)

  • 田口元義●文 text by Taguchi Genki
  • photo by Kyodo News

夏の甲子園で再会

 澤井は自らを「中身が伴っていないのに注目された選手」と評している。

 決してそうではない。いま風に言えば、彼は"持ってる"選手だった。実際の数字は突出していなくても、大事な場面で打つ。そのインパクトが強いからこそ、より名が引き立つ。3年夏の千葉大会の決勝戦、8回の同点スリーベースもそうだった。決勝打ではないが、「澤井が打って優勝した」という記憶は多くのファンの脳裏に焼き付いている。

 東西の主砲は夏も甲子園で再会した。開会式で報道陣からツーショット写真をせがまれても、笑顔で対応する余裕があった。

 そして、澤井にとって甲子園での最後の瞬間も、ふたりは同じ場所にいた。

 銚子商が3回戦で旭川実に敗れグラウンドをあとにしようとすると、三塁側ベンチには次の試合を戦うPL学園が入ってきた。甲子園球場をあとにする澤井を収めようと、カメラマンが大挙して押し寄せる。その状況のなか、澤井の目が人だかりの隙間からキャッチボールする福留の姿をとらえた。

 福留......福留! 澤井が声を張る。

「絶対勝てよ!」

 少し笑みを浮かべながら、福留がグラブを上げて応えた。

「僕らが負けた試合のベンチに孝介が入ってくるっていうのも、なんか縁があったんでしょうね。本当は近くまで行って、ちゃんと声をかけたかったんですけど」

 西の福留を見届けた東の澤井の表情は、どこか爽やかだった。それも聖地の土から離れると、沸々と感情が込み上げてくる。

「これでもう、銚子商業のユニフォームを一生着られないんだな......」

 甲子園のアイドルと呼ばれた男が、人知れず顔をぐしゃぐしゃにして泣き崩れた。

後編につづく

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