費用約10万円、復帰率90%...身近になったトミー・ジョン手術を受ける前にやるべきこと (4ページ目)

  • 中島大輔●文 text by Nakajima Daisuke
  • photo by Ichikawa Mitsuharu(Hikaru Studio)

 慶友整形外科病院の古島医師が独自の適用基準を説明する。

「ヒジの靭帯損傷の場合、僕のなかで<軽い><中くらい><重い>の3つに分けて、そのなかでさらに<軽い><重い>の6段階に分類します。<中の軽い>までなら効くかもしれない。<中の重い>は厳しい可能性がある。だけど早い復帰が一時的に望まれる場合には、『状態が悪いけど、やってみるか』ということもあります。でも、酷い人はまた痛くなる。軽い人なら思ったよりよくて、PRPが効いているんだなというのがありますね」

 一方、岡山大学整形外科の島村医師はこう見解を述べる。

「ヒジの内側靱帯へのPRPはあまり信用していません。ただし、なぜか知らないけど『効いた』と言う人がいる。だから適用が難しいです。ヒジのコンディションがどうしようもなくて、こちらから見たら『トミー・ジョン手術をしたほうがいいでしょう』という症例でも、『絶対手術はしない』という人もいます。そして数カ月後に実戦をやらなければいけないという時、僕のいい口としては『最後、おまじないをする?』というのがPRPです」

 エビデンスがなく、医師でさえ明確な理由はわからないが、「効いた」と言う人もいる。考えられる可能性として、高島トレーナーは「痛みの原因として、そこまで靭帯が影響していなかったんじゃないですか。ちょっと期間があいて、ほどよく休めて復活した」と私見を述べた。

 ちなみにPRP療法についてエビデンスが出ている部位もあり、島村医師は「(ふくらはぎやハムストリングの)肉離れにはいいと思う」と話した。

 対してヒジの靭帯には効果が不確かで、大谷のようにPRP療法ではうまくいかなかった場合、最後はトミー・ジョン手術に至る。そうした意味でも"最終手段"と言えるだろう。

出術決断に最も必要なこと

 だが、さまざま理由で手術に踏みきることができず、野球人生をフェードアウトしていく投手は少なくない。実際、古島医師はそうしたケースを見てきた。

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