費用約10万円、復帰率90%...身近になったトミー・ジョン手術を受ける前にやるべきこと (5ページ目)

  • 中島大輔●文 text by Nakajima Daisuke
  • photo by Ichikawa Mitsuharu(Hikaru Studio)

「ヒジが痛くてスピードは落ちたけど、そこそこ投げられるとします。この子にとって手術したほうがいいのか、このまま『頑張れ』と続けさせるのがいいのか。大学3年の春や秋に『痛い』と言ったら、周囲は『どうする?』となるじゃないですか。このまま投げられればスカウトが来てプロに行けるかもしれないのに、手術したら絶対無理。そこで痛いのを我慢して投げても、球速が上がらない。そうやって悩むうちにシーズンが始まり、機を逃して、結局うやむやになっている子もいます」

 巨人の山﨑はまさに大学3年秋にヒジの靭帯を部分断裂し、望みを託して年明け3月から始めたPRP療法では好転せず、5月中旬にトミー・ジョン手術を決断した。後押しされたのが、執刀医にかけられた言葉だった。

「もしPRPをして一時的によくなったとしても、野球人生のなかでトミー・ジョン手術をしないと、これから先に行けないと思うよ。若い年のほうが回復力もあって、治っていくスピードが速い。するなら早いほうがいいんじゃない?」

 山﨑は6月にメスを入れる以前、社会人野球の強豪チームから内定が出ていた。そこで1年間リハビリし、その先を目指そうと考えていた。だからこそ決断でき、巨人というよりよいリハビリ環境にたどり着いた。

 トミー・ジョン手術という重い決断を下すには、不可欠なことがある。自分は野球人生でどこを目指すかという、ビジョンだ。

第3回につづく

(一部敬称略)

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