奥川恭伸がメジャーの偉大な大投手から学ぶエースの哲学「勝つことよりも負けないこと」 (4ページ目)

  • 島村誠也●文 text by Shimamura Seiya
  • photo by Koike Yoshihiro

── 当時、メジャーリーグでも減少傾向にあった先発完投について、ともに「完投を考えて投げていない」と言っていました。大事なことはチームが勝つことだと。

「そこの感覚は似ています。中継ぎ投手が疲れていたら、僕が1イニングでも多く投げるのもありですし、逆に中継ぎ投手の間隔が空いていたら、8、9回に投げてもらうのもひとつかなと。僕も完投にそこまでのこだわりはないです」

── グラビンは若い投手に対して、「たとえばいい真っすぐとカーブを持っているなら、まずはそれでどこまで通用するか試すべきだ」とアドバイスしていました。今では古い考えかもしれませんが、持ち球に磨きをかけてからほかの球種を覚えればいいということでした。

「そこは僕も同じ考えです。全部が中途半端になるのは一番もったいないことなので。今は真っすぐ、フォーク、スライダーを投げているんですけど、この3つの精度を上げることを目的としてこのキャンプもやってきました。とくにフォークはシーズンを通してムラがあった球種だったので、そこを課題に取り組んでいます。どの球種でもカウント球や決め球などいろいろな使い方ができればピッチングの幅も広がるので、そこはしっかり追い求めていきたいです」

── 奥川投手が考える先発投手の条件とは?

「これは先発のなかのポジションでも違ってくると思います。1番目に投げるピッチャーと6番目に投げるピッチャーとでは役割が違うので。去年なら、僕は6番目くらいでしたのでまずは6回3失点以内を目標に、そういう仕事が求められていると思ってマウンドに立っていました。そこがクリアできるようになれば、7回2失点も見えてきますし、そのあとの8回、9回も見えてくる」

── グラビンは「試合をつくる能力、つまりゲームプランを組み立てることが大事だ」と話していました。

「そこが6回3失点なのかなと。ある程度ゲームはつくれていますし、そんなに大崩れしていることにはならないので。そこは最低限の役割かなと思って、いつもやっています」

── 奥川投手が1番目、つまりエースになった時はどういう条件を課しますか。

「うーん......ビッグゲームに負けないというのもそうですし、勝つことよりも負けないことが大切かなと思います。相手チームのエースとの対戦も増えるので、向こうのエースを勝たせないこと。それがシーズンを通して大切になってくるかなと思います」

後編につづく

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