奥川恭伸がメジャーの偉大な大投手から学ぶエースの哲学「勝つことよりも負けないこと」
プロ野球2022開幕特集
ヤクルト奥川恭伸インタビュー(前編)
春季キャンプ中、奥川恭伸(東京ヤクルトスワローズ)は朝のストレッチをじつに丁寧に行ない、これから始まる1日、そして自身の将来を大事にしていることが伝わってくる。
その奥川がまだ1歳にも満たない2002年2月、メジャーのグレッグ・マダックスとトム・グラビンの左右エースに「先発投手としての生き方」について取材をした。ふたりが所属していたアトランタ・ブレーブスは当時ナ・リーグ東地区を10連覇中で、マダックスは257勝、グラビンは224勝という圧倒的な数字を残していた。
マダックスは"精密機械"の異名をとり、1997年に76球で1失点完投勝利という異次元のピッチングを披露し、2001年には72回1/3連続無四球のリーグ記録を樹立。最終的に23年の現役生活で740試合に先発し、通算355勝をマークした。
一方のグラビンも現役22年で305勝を積み上げ、故障者リストに入ったのは現役最終年の一度きりと、ともに「THE 先発投手」としてメジャーに君臨していた。今回、奥川に偉大なふたりの大エースが語っていた「先発投手としての哲学」について感じたことを言葉にしてもらった。
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マダックスと共通する思考
── マダックスのことは?
「投げている姿を見たことはないのですが、100球以内で完封することを"マダックス"と表現されることは知っていました」
── マダックスは登板翌日の調整について、「体が完全に拒否していたら投げない。感覚的によければ投げる」と語っていました。そして大事にしているのは、ボールが手元から離れる感覚で「それがよければ5分で終わるし、不安があれば40分以上投げることもある」と。それについてはどう思いますか。
「とてもいいと思います。投げたくない日に投げてもいいことはないですから。自分の体のフィーリングに合わせて、指先の感覚がよかったらそこで切り上げ、悪く感じたらちょっと投げるというのは、すごくいいなと思います。自分もこのキャンプは、ブルペンで大体の予定は立てていましたけど、体が疲れていると感じたら球数を少なくしたり、調子が悪いと感じたら投げて調整したり......そういう取り組みはしていたので、考え方としてはとても似ていると思います」
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