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ビッグベイビーからビッグチャイルドへ。ソフトバンク5年目のリチャードは覚醒するか (2ページ目)

  • 田尻耕太郎●文 text by Tajiri Kotaro
  • photo by Koike Yoshihiro

 ホークス世代交代へ。その期待の筆頭株がリチャードだ。

 昨年は開花を予感させるシーズンとなった。9月、プロ4年目にしてようやく一軍初出場を果たすと、デビュー3戦目の同5日の本拠地PayPayドームでのバファローズ戦で大仕事をやってのけた。

 1点ビハインドの4回裏一死満塁。ベテラン右腕の増井浩俊の149キロ直球を左翼席へ叩き込んだ。ド派手なプロ1号逆転グランドスラムだった。さらにこの日はもう1発を放ち、2本塁打6打点で文句なしのヒーローとなった。

 シーズン終盤は一軍に定着。スタメン出場機会もしっかり得て、34試合出場の116打席で7本塁打を放った。これを、シーズンでほぼフル出場し500打席に立ったと換算すると、30.2本の本塁打を放つことになる。

 一方で、打率は.181とかなり物足りない数字だったが、それでも自慢の長打力が一軍で通用することは十分に証明してみせた。

【若手ではメンタルが一番弱い】

 一軍で活躍し始めたあともリチャードは、たびたび藤本監督の名前を出しては感謝の想いを口にしていた。

 たとえば昨年の6月、二軍戦で40打席ノーヒットというどん底を味わっていた時のこと。「ベンチと守備位置と打席を交互に行き来するだけだった」という毎日だったが、二軍監督だった藤本監督は我慢して4番打者で起用し続けた。

 快音のないまま7月を迎えた時、リチャード本人が藤本監督に「三軍へいかせてください」と直訴。その思いを汲んで三軍へ送り込むと、1番打者で出場した試合で4打数3安打1本塁打と打ちまくった。

「野球楽しくねーなって思っていたのが、一気に楽しくなって。あの時は久々に塁に出たから、『盗塁でもしてみようかな』って思ったりもしました(笑)」

 その後も、藤本監督の言葉に救われたことがあった。東京五輪期間中のエキシビジョンマッチで一軍戦に召集されたリチャードはチームトップの2本塁打、9打点をマークしながら、後半戦は二軍スタートとなった。

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