ウイスキー瓶を投げられたポパイ長田は、外野席まで犯人を追いかけた
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「令和に語る、昭和プロ野球の仕事人」 第21回 長田幸雄・前編 (記事一覧を見る>>)
個性豊かな「昭和プロ野球人」の過去のインタビュー素材を発掘し、その真髄に迫る人気シリーズ。川崎球場時代の大洋ホエールズ(現・DeNAベイスターズ)で活躍した背番号7の"ポパイ"こと長田幸雄(おさだ ゆきお)さんをオールドファンは覚えているだろうか。
顔つきが似ているだけでなく、力自慢の強打で鳴らした打撃スタイルもそのニックネームにふさわしかった長田さん。巨人のV9期と重なったこともあり、一度も優勝を味わうことはできなかったが、それでも"キャラが立つ"選手として16年ものプロ野球生活をまっとうした素顔に迫る。
フルスイングする大洋時代の長田さん(写真=時事フォト)この記事に関連する写真を見る
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長田幸雄さんに会いに行ったのは2010年6月。スポーツ紙のコラムに長田さんが取り上げられていて、現役時代のニックネームが[ポパイ]だったと知って、俄然、興味を持った。かつて大洋でプレーしていた選手で、左の強打者として怪力ぶりを発揮しつつ、愛嬌のある顔立ちだったことから、その異名がついたという。
元記者の有本義明氏が執筆した同コラムによれば、長田さんは山梨の出身で中学時代はスピードスケートの選手。吉田高では1年の春から4番を打ち、社会人野球のリッカーミシンに進んでも長打力を発揮する。1961年に入団した大洋では1年目からスタメンで起用され、68年には5試合連続本塁打を記録したそうだ。
5試合連続はすごい、と思って調べると、これは当時のセ・リーグ新記録。巨人の王貞治が日本記録の7試合連続を達成するのは4年後のことだ。しかも長田さんは63年に8打席連続安打も記録。何か、ひとたび当たると打ちまくるイメージがある。そのイメージは、缶詰のホウレンソウを呑み込んだ途端にパワーアップするアニメの『ポパイ』に連なるような気もした。
かと思えば、64年、川崎球場での対巨人戦、レフトを守っていた長田さんは酔客にウイスキー瓶を投げつけられて激怒。逃げる客を追ってフェンスをよじ登り、客席に乱入したため、ルール違反で退場処分になったという。文献資料ではそんな長田さんを「熱血漢」と称していたが、この逸話もまた、荒唐無稽な『ポパイ』のアクションを彷彿とさせるものがあった。
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