【独占インタビュー】斎藤佑樹が悔やむあの夏「投げ方が狂って、歯車がズレ始めていた」 (4ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • photo by Koike Yoshihiro

── 夏の甲子園から考えれば16年、斎藤さんは"斎藤佑樹"であることを演じさせられてきた感じはお持ちですか。

「それはもちろん、あります。もちろんあるし、今でもかすかに残ってるんじゃないかなと思います」

── "斎藤佑樹"を演じることを、斎藤さん自身はどう捉えていたんでしょうか。

「どうなんでしょうね。もし今の僕が甲子園で勝った直後に戻ったら、もっともっと演じているかもしれませんよ(笑)。だって、高校生や大学生だった時の僕はノリにノってたし、ホントに何でもできると思っていましたから......。そう思うと、よくあの程度で収まっていたなって。もっともっと調子に乗っていてもおかしくなかったし、周りのことなんか何も考えずに突っ走っているんじゃないかな」

── そうやって聞くと、"斎藤佑樹"を演じていたことは、必ずしも居心地が悪かったわけではないんですか。

「ただ、どこかで気恥ずかしさを感じながら演じていましたね。だから、もちろん今の僕なら、絶対、そんなふうには演じさせませんよ。むしろ、もっと堂々と演じればいいんだって言います」

── 堂々と演じる(笑)。

「堂々とすればいいのに、ヘコヘコしてましたからね(笑)。もっと素の自分をさらけ出したかったんですけど、自分が置かれている立場を考えて気恥ずかしさが出てしまっている感じ。チームのど真ん中にいようとしてもよかったのに、ほかの選手に気を遣って自分は表に出ないようにしようとか、周りを見ながら立ち位置を探っているところはあったかもしれません」

── そうだとすると、演じることはやっぱり辛くて、苦しかったのかな。

「そうですね......。でも、みんなが僕に自分を投影してくれているのかなと思うことは、決して苦しいことではなかったような気がします。実際、今の僕も夏の甲子園の時の自分に気持ちを投影していますからね。あの夏、(延長15回の決勝引き分けを含めて)準々決勝から4連戦で4連投、4完投(4日で553球)した最後の決勝再試合、肩はすごく疲れていたし、身体も全然動かなかったんですけど、それでも投げなくちゃいけないって当たり前のように思っていました。

 もちろん、あの時は今に比べれば若いし、元気だし、身体に不安もありませんでした。でも、ホントに今もまったく一緒で、腕は上がらないし、身体は思うように動かないのに、投げ続けなくちゃいけないと当たり前のように思える。それは今の僕が"斎藤佑樹"に気持ちを投影しているからなのかな、なんて考えたりしたこともあります」

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