西武・栗山巧が2000安打を達成。「こんなに練習できる子を見たことがない」という高校時代のエピソード (2ページ目)
1年生とは思えない走塁センスとアグレッシブなプレースタイルにゾクっとしたが、その一方でバッティングには非力さを感じた。それが評価を「△」にした理由だが、今にして思うとなんと失礼なことをしたのかと......ただただ反省である。
高校生当時の栗山に、思わず唸ってしまうエピソードがある。育英高校は夜22時にはグラウンドを出て帰宅するというルールがあったのだが、栗山は帰宅するフリをして、チームメイトや監督が帰宅した頃を見計らって、再びグラウンドに戻って"秘密の自主練"をし、終電で帰宅していたという。
そうした努力が実を結び、まだ体は細かったが高校通算35本塁打という実績を生んだ。なにより監督が「こんなに練習できる子を見たことがない」という心身のたくましさがドラフト4位という評価につながったのだろう。
その後、パ・リーグを代表する選手となった栗山だが、とくにバッティングを見ていて「すごいなぁ......」と思うのは、ファウルがほとんど三塁側にしか飛ばないことだ。ボールを呼び込める「間(ま)」をつくれる選手。時間をかけてタイミングを取って、しっかりボールを見極め、ギリギリのタイミングでバットを出す。
こういうバッターは、バッテリーの心を傷つける。たとえば、裏をかいてアウトコースいっぱいのストレート。「見逃し三振!」と思ったその瞬間、ミットに吸い込まれるはずだったボールをバットがとらえる。ヒットになってくれればまだいいが、ファウルにされたら、ピッチャーはまた投げなければならない。しかもベストボールの直後の1球というのは失投になりやすい。そこを狙いすましたように快打を放つ栗山を何度も見てきた。
これぞ「プロ」のバッティングである。何度も悔しい思いをし、そのたびに考え、猛練習によって課題をクリアしてきた。その積み重ねが2000安打という偉業につながったのだろう。
今年38歳になった栗山だが、 "野球"はまだまだ若々しい。そのプレーには、ベテランやレジェンドというより「野球小僧」という言葉が似合う。いつまでもグラウンドを駆けまわってくれるはずだ。
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