岩瀬仁紀が徹底解説。侍ジャパンはなぜアメリカを0点に抑えることができたのか

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by JMPA

 東京五輪・野球日本代表は8月7日、アメリカ合衆国との決勝戦に2対0で勝ち、見事金メダルを獲得した。自身もアテネ五輪銅メダリストであり、北京五輪では屈辱(4試合登板、0勝3敗、防御率11.57)にまみれた岩瀬仁紀氏に日本代表の戦いぶりを総括してもらった。

2−0でアメリカを下し、悲願の金メダルを獲得した侍ジャパンの選手たち2−0でアメリカを下し、悲願の金メダルを獲得した侍ジャパンの選手たちこの記事に関連する写真を見る── 東京五輪で侍ジャパンが悲願の金メダルを獲得しました。岩瀬さんにとっても、万感の思いがあるのではないでしょうか。

「本当にそうです。五輪で金メダルをずっと獲れていなかったなかで、東京五輪で悲願を達成できた。野球に携わる人間として、非常にうれしいです。ましてや野球の競技人口が減っているなか、これで『野球をしたい』と思う子がひとりでも増えてほしいなと思います」

── まずはアメリカとの決勝戦の試合内容について振り返らせてください。森下暢仁投手の先発に始まり、6回以降は千賀滉大投手、伊藤大海投手、岩崎優投手、栗林良吏投手と継投して完封しました。

「おそらくこのピッチャーが投げるだろうと予想していたとおりだったのですが、まずは何より森下が5イニングをしっかり投げてくれたことが大きかったですね。カーブをうまく使って、相手打線に的を絞らせない投球ができました。彼の好投で、投手陣全体にいい流れをつくれました」

── 千賀投手の2番手起用も岩瀬さんの読みどおりだったのですか?

「『もしかしたら2イニングいくかも?』と思っていました。でも、ボールに力があった半面、力みからかコントロールに少し苦しんでいました。だから1イニングでの交代になったのでしょう」

── 大会前は故障明けである千賀投手の状態が不安視されていましたが、ボールは本来の球威に戻ったように見えました。

「ノックアウトステージでのアメリカ戦で2イニングを投げ、5奪三振、無失点。この投球で本人も首脳陣も『いける』と手応えを得たはずです。あとは、ショートイニングだからこそ力を発揮できたのかもしれません。落ち着いて投げられるようになって初めて、彼本来のピッチングが見られるようになるはずです」

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