「犬猿の仲」高橋慶彦×正田耕三、禁断の対談が実現。「天才やもん、あいつ」と頭にきていた選手は?

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • 布川航太●撮影 photo by Nunokawa Kota

広島カープOB
高橋慶彦×正田耕三対談(前編)

―― 高橋慶彦さんと正田耕三さんの対談をやるので、聞き手をお願いできますか?

 スポルティーバ編集部のTさんから最初に連絡を受けた際、耳を疑った。高橋慶彦さんと正田耕三さんは、ともに広島東洋カープのスター内野手だった。スイッチヒッターで俊足という共通点を持ち、1980年代後半には二遊間を組んだ名コンビでもあった。

 だが、高橋さんが「(正田さんに)飛び蹴りをお見舞いしてやった」と証言するように、現役時代は犬猿の仲と言われた。そんな二人が対談をするとなれば、歴史的和解の場になるのではないか。

 5月に高橋さんはスポルティーバの企画「高橋慶彦が選ぶスイッチヒッターベスト5。『オレは実験台だった』」の取材に答えた際、こんなことを言っていた。

「まあ、若いころはお互いに尖っていたから。今は普通の関係だし、この間も電話で話しましたよ」

 その言葉を鵜呑みにしたTさんが高橋さんと正田さんの双方にオファーし、東京都内での対談が実現したのだった。

 対談当日は気温33度。拭いても拭いても汗が噴き出てくる暑い日だった。まず会場に現れたのは正田さん。ハーフパンツにTシャツというラフな格好である。

 その場に居合わせた旧知の関係者から「ジャケットじゃないんですか?」と聞かれた正田さんは、こう答えた。

「え、あかん? でも、高橋さんも絶対にジャケットで来ないよ」

 ほどなくして、高橋さんも登場。やはりTシャツ姿で、正田さんの「ほら、ジャケット着てへんやろ?」という言葉にその場は爆笑に包まれた。高橋さんは「今の時期に着たらアカンやん」と応じる。

 すると、正田さんは高橋さんが杖をついて対談場所に現れたことに触れた。

正田 杖、どうしたんですか?

高橋 (手術をして)股関節に人工骨頭を入れたんよ。1ヶ月前に。もう歩けんから。

正田 お元気なんですか。

高橋 元気、元気。元気じゃないのここ(股関節)だけ。それもあと1ヶ月くらいリハビリすれば大丈夫だから。ショウ(正田)と会うのはいつ以来やったかな。

正田 僕、韓国に行ってましたからね。

高橋 知ってる、知ってる。ショウが韓国のどこかのチームのコーチをしていた時に、会わなかったっけ?

正田 キャンプの時でしたよね。

高橋 そうそう。何年行ってた?

正田 トータルで6年ですね。

高橋 じゃあ、韓国語はケンチャナヨ(大丈夫)?

正田 もう、ケンチャナヨ(笑)。

高橋 じゃあ韓国語でやろうか。

正田 高橋さんも昔、少しだけ行ってましたよね。

高橋 そう、3ヶ月くらい。だから、ケンチャナヨ(笑)。

 二人はまるで4・6・3のダブルプレーを完成させるように、軽やかに言葉のキャッチボールを重ねていく。遺恨ムードは微塵も感じられなかった。

 それでも、いきなり「本丸」に切り込むのはためらわれたため、対談はお互いの現役時代の話題からスタートした。

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