内川聖一が現役にこだわる理由。新天地で楽しみたいこと、学びたいこと (4ページ目)

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • photo by スポーツ報知

 もっとも選手である以上、まずは自らの立場を確立することが最優先事項となる。

「今の段階ではケガをせず、1年間試合に出られる状態を作りたい。そのなかでホークスの時のように、自分でコントロールできない部分も出てくると思う。そこはキャンプやオープン戦をこなすにつれて、だんだん自分の立ち位置がわかってくるはず。

 レギュラーなのか、代打なのか、いろんな役割が出てくるなかで、自分がどこに一番必要されているのか。若手のことを考えるのは、そこがはっきりとしてからになると思います」

 やはり、内川にあるのはプロ野球選手としての抑えきれない欲求だ。

「やっぱり、レギュラーとして試合に出たい。試合に出ないとプラスもマイナスもないので。僕はこれまで試合に出るなかで、打てた喜びだったり、打てなかった悔しさを常に考えながらやってきました。ケガをしている時もそうですけど、試合に出られなければ、プラスもなければマイナスもない。それじゃあ、つまらないじゃないですか。プラスもマイナスも感じられる状況に身を置き続けることが、一番重要なのかなと思います」

 20年に渡る現役生活において、内川はすでに多くのものを手にしてきた。日本一、世界一、首位打者、MVP、2000本安打と、取れるものはすべて掴んだと言えるだろう。にもかかわらず、環境を変えてまで、現役にこだわり続ける理由は何か。

「よくばりなんですよ(笑)。今まで取ってきたものを振り返ったりすることはあまりないですね。何かを取ったからといって、モチベーションがなくなるということはない。常に100%でいたいという想いだけ。そこは若い頃から何も変わっていないですね」

 自身を律し、心も体も鍛え続けるのもつらいんじゃないですか? ちょっぴり意地悪な質問をぶつけると、内川は笑って答えた。

「楽しいですよ。この年齢になってくると、自分の身体や思考と対話できるようになってくるんです。若い頃は、これだけやっていればいいとか、これを極めたいという感じで、追い詰めながらとことんやっていました。だけど、ここまでくると体力的な変化も出てくるので、頭をクリアにして、考えながらやっていかないと、そこにはたどり着けないんです。

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