長谷川勇也のヘッスラに見たホークスと巨人、勝者のメンタリティの違い

  • 田尻耕太郎●文 text by Tajiri Kotaro
  • photo by Kyodo News

 野球は生き物だ----。

「何度やっても同じ試合はない。1球1球の状況の変化に、生きている、戦っているという実感がある」

 以前、王貞治球団会長がインタビューで話してくれた言葉だ。ただひとつのプレーが勝敗を分ける。短期決戦の日本シリーズでは、それがとくに色濃くなる。

 あまりにも一方的な展開で終わってしまった今年の日本シリーズ。ソフトバンクは終始勢いを手放さなかった。

 第1戦に先発した千賀滉大が巨人打線を力で封じこめば、5番で起用された24歳の若鷹・栗原陵矢が球界のエース・菅野智之から先制2ランを含む3安打4打点の活躍を見せた。

 初戦を終えたところで、ソフトバンクには「今年もいけるぞ!」、巨人には「やはり敵わないのか......」というムードが漂ったはずだ。そして第2戦は13対2という大差でソフトバンクが圧勝した。

 この時点でシリーズの行方が見えたという声は少なくなかった。たしかに、2試合を見ただけで両者の力の差は明白だった。だが、勝負ごとに「絶対大丈夫」は存在しない。

 昨年までの日本シリーズで連勝発進したケースは37回あり、そのうち連勝したチームが日本一になったのは28回だった。V確率76%と聞けば高く感じるが、逆にこの展開からひっくり返されたのは9度もあった。

 そのひとつが2000年、あの"ONシリーズ"を戦ったソフトバンクの前身であるダイエーホークスだ。ダイエーは東京ドームで連勝したが、地元・福岡に戻って敗れ、結局4連敗を喫してしまった。

 そういう意味で、第3戦もまた今回のシリーズのカギを握る重要な試合だった。

 ソフトバンクはマット・ムーア、巨人はエンジェル・サンチェスの両外国人の先発で始まった。試合はいきなり波乱の幕開けとなる。

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