給料未払いで裁判、GM逃亡...無名の日本人投手が体験した海外リーグの現実 (6ページ目)

  • 阿佐智●文 text by Asa Satoshi

 メジャー経験者も少なくないこのリーグで、安井のピッチングは通用せず、たった1試合、先発のマウンドに上がっただけで戦力外となった。おまけに月1250ドルだったはずの給料は支払われなかった。安井は泣き寝入りすることなく、球団相手に裁判を起こした。

「知人に話したら『大使館に相談しろ』って言われて、そのとおりにしたら弁護士を紹介してもらいました」

 さすが訴訟大国・アメリカである。勝ち目があれば、誰でも簡単に裁判を起こせる。裁判は、契約書にサインをしている以上、当然のごとく勝訴となった。

 2012年、安井はメキシコにいた。メキシカンリーグの下部リーグであるバキュエロス・デ・アグアプリエータというチームでプレーすることになったのだ。

「オーナーが地元でいろんな事業をしていたお金持ちで、給料日にはカバンにお金を入れてやってきて、ひとりずつ手渡してくれるんです。給料もよかったですし、日本からの飛行機代、現地のホテル代も全部出してくれるなど、待遇はよかったです」

 アメリカと隣接するこの町にある球場は、レフトスタンドがそのまま"国境"になっていたという。

「フェンスの向こうにある川を挟んで、その奥がアメリカなんです。どうせなら、バッターにアメリカまで打ってもらおうと、ど真ん中に投げ続けたんですけど、そういうときに限って打たれないんですよね(笑)。まあ、ここもひと月半でクビになっちゃったんですが......」

6 / 7

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る