ホークスに高谷裕亮が欠かせない理由。たしかな技術と抜群のコミュ力

  • 安部昌彦●文 text by Abe Masahiko
  • photo by Koike Yoshihiro

「あれー、安部さんだ!」

 室内のブルペンから出てきた日焼けしたヒゲ面の男が、向こうで笑っている。

「今年は来ないかなぁって思っていたんですよ」

 野太い声がこだまする。チームの"主"みたいな男は、今年も健在だった。

 初めて会った人との距離も、ひと言で一気に近づけてしまう言葉の魔力を、この男は知っている。ソフトバンクの高谷裕亮(たかや・ひろあき)は、そうした"コミュ力"に長けた選手である。

スーパーサブとして存在感を放つソフトバンク・高谷裕亮スーパーサブとして存在感を放つソフトバンク・高谷裕亮「ヒゲぐらい剃ってこいよー。こんなに人が見に来てるんだから(笑)」

 そう言って、高谷は頬をなでると、「今朝、剃ってきたんですよー。これでも」と、そんな大きい声で言わなくても聞こえるよ......というぐらいの蛮声で返してくる。

 その響きに、関係者や記者、練習中の選手までもが集まり、「高谷のヒゲ面」をいじりまくって、笑いが起きる。

「ヒゲぐらい剃ってこいよー」というセリフを、以前にも、高谷に浴びせたことがある。白鴎大時代の高谷を取材した時だ。大学近くにある市営球場のダグアウト。ヌーッっと現れた彼の顔を見て、思わずそのセリフが出た。それが高谷との初対面だった。

「社会に出たことがある分、ほかの選手がしていないことを経験しているのが自分のアドバンテージだと思います。選手たちをまとめていくのも、自分のプレーにも有利に働くと思います」

 ゆっくりと、よくわかるように話そうとする口ぶりが、並みの学生とは違っていた。貫禄のような安心感が伝わってきたのは、ヒゲが濃いせいだけじゃなかった。

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