阪神・糸原健斗が目指すウザい男。
「相手が嫌がることをするのが仕事」

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Koike Yoshihiro

 阪神という球団は特殊だと、つくづく感じる。

 ファンの熱狂度は高く、在阪メディアも連日大挙して押し寄せる。新外国人選手が開幕から活躍できなければ、4月から大バッシングを受けることなど当たり前。いくら能力が高くても、ファンとメディアの圧に押し潰されて実力を発揮できない選手も多いようだ。

一昨年から2年連続してフル出場を果たしている阪神・糸原健斗一昨年から2年連続してフル出場を果たしている阪神・糸原健斗 そんな環境で、いつも不思議に感じていた。阪神のキャプテンを務める糸原健斗は、なぜ平気な顔をしてプレーできるのだろうか。

「スタンドのヤジはきついですけど、よかった時はめちゃくちゃ喜んでもらえますから。メディアも活躍すればよく書いてくれますし、前向きに考えています」

 糸原はこともなげにそう語る。その一方で、いくら持ち上げられても浮ついた様子を見せることもない。おだてられ、調子に乗った時期はないのか聞いてみると、糸原は首を横に振った。

「流されるのは一番イヤなので。私生活がしっかりしていれば野球につながるということは、高校でも教わったことですし、大学でも監督、コーチから強く言われて、社会人ではそれが当たり前になっていましたから」

 筆者は開星高、明治大、JX−ENEOS、阪神と糸原を取材し続けている。ここまで山あり谷ありの連続だったが、糸原の芯の強さは一貫して変わっていない。高校時代の恩師・野々村直通監督(開星)はプロ入り直前の糸原をこう評していた。

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