楽天・藤田一也は攻守の切り札。CS制覇へ「男前の監督を男にする」 (2ページ目)

  • 田口元義●文 text by Taguchi Genki
  • photo by Koike Yoshihiro

 あの本塁打にしてもそうだ。タイミング、スイング軌道、フォローまで、完璧に近い形で打てたと認めながらも「まだ迷子です。目をつぶって打ったら、すごくいい形で打てたのでこれからも目をつぶって打ちます」と自嘲気味に笑った。

 そんな藤田も、平石監督への話になると表情が引き締まる。「監督のためにという想いが、ああいったパフォーマンスに表れているのではないか」と聞くと、藤田は「そうっすね」と首肯する。

「やっぱり、それが強いんですよね。こんなCS争いをしている大事な時期に、ショートでスタメンとか、いい場面での代打とか、無茶な起用をしてくれるんで(笑)。なんとか監督の期待に応えたいって、強く思いますね」

 藤田と平石監督の関係は深く、長い。

 最初の出会いは大学時代。藤田が進学した近畿大と同じ関西学生野球連盟に平石監督が在籍していた同志社大も加盟していた。平石監督の方が2学年上だが、ともに関西選抜チームに選出されたことが縁で、「よくかわいがってもらった」と藤田は懐かしむ。

 藤田にとってプロでの初キャリアとなった横浜でも、楽天との試合になると平石は必ず「頑張ってるな」と声をかけてくれた。

 トレードで楽天に移籍した2012年には、平石は指導者になっていた。2013年には選手と一軍コーチという立場ながら、ともに日本一の美酒を味わった。

 そして今年、平石が一軍監督となった。藤田の心が静かに燃える。開幕前、機知に富んだ表現で、こう誓いを立てた。

「12球団で一番若い監督なので、最年少で優勝したってなると話題にも上がりますからね。選手とコミュニケーションをすごく取ってくれるし、気持ちもわかってもらえるというのは、選手にとってすごくありがたいことなんです。だから、本当に監督を胴上げしたい。なにせ男前なんで(笑)。男前の監督を男にしたい」

 今季は浅村栄斗が加入したことで、本職のセカンドを明け渡し、ショートを守ると決めた。それも平石から「浅村を起用する」と告げられ、「レギュラーを奪い取れ」と立場を明確にしてもらえたことに感謝する。

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