2019.09.22

キャリアハイの数字を残す荻野貴司。
読めばわかるファンに愛される理由

  • 永田遼太郎●文 text by Nagata Ryotaro
  • photo by Kyodo News

 9月13日、メットライフドーム。荻野貴司(ロッテ)が約2週間ぶりに一軍に合流した。

 軽い腰痛を患い、大事をとっての登録抹消だったが、昇格直後の西武との4連戦では、全試合に「1番・センター」でスタメン出場。15日の試合で4安打を放つなど、4試合で19打数6安打と気を吐いた。

現在、チームトップの打率をマークしている荻野貴司 プロ10年目の今季は、初のオールスターゲーム出場と規定打席到達。また、822日の楽天戦では史上77人目の通算200盗塁も達成し、シーズン安打数も自己最多の153本(9月21日現在)まで伸ばしている。さらに、打点、本塁打、盗塁もキャリアハイ。打率も3割をキープするなど、33歳にして飛躍の1年となった。

 しかし荻野は、慎重に言葉を選びながら、こう語る。

「本当に(数字は)なにも意識していません。目の前の1試合を必死にこなしている感じで、当然、先のことなんてわからないし、考えてもいない。規定打席に到達したことはたしかにうれしいですけど、目標はそこじゃないので。それくらい(毎日が)しんどいので、考えている余裕なんてないです」

 普段から物静かで、口数は決して多い方じゃない。だからといって、人当たりが悪いわけではなく、現場で声をかければ自然と笑みがこぼれる優しい性格の持ち主である。

 もう2~3年前の話になるだろうか。キャンプ中のあるオフの日、石垣島の観光スポットで家族サービスに勤しむ荻野とバッタリ出くわした。

「家族みんながこっちに来ていたので、ちょっと出てみようかなと思って……

 球場を離れれば、どこにでもいる心優しいパパである。そんな荻野だからこそ、球場で少年ファンを見つけると、ごく自然にファンサービスへと体が動く。

 たとえば8月14日の東京ドームでの日本ハム戦では、8回裏の守りからベンチに下がると、レフトの三家和真のキャッチボール相手として現れ、それが終わると近くにいた幼い少年ファンにボールを手渡した。

 この日の荻野は、日本ハム先発の吉田輝星から2打席連続本塁打を放つなど、3安打の活躍を見せた。この試合のヒーローである荻野からプレゼントされた日付入りのボールは、少年ファンにとって大切な思い出の一品になったことだろう。