西武・平井克典の投げすぎ問題。イニングまたぎ平然も壊れないか心配だ (3ページ目)

  • 中島大輔●取材・文 text by Nakajima Daisuke
  • photo by Jiji Photo

「バッターはバックドアを待つと、内角に来たときに対応できないので、待てないと思います。こっちからするとハイリスクハイリターンのボールだから、腹をくくって、どれだけ腕を振れるか。(腕を振れずにボールを)置きにいったら、たぶんわかっちゃうので逆に打たれるんです」

 右だけでなく左も抑えるようになり、回またぎが増えた。7日9日時点の投球回数は47.2回で、ブルペン投手ではリーグでもっとも多い。他のリリーバーを見ると、松井裕樹(楽天)は41.1回、同僚の増田達至は39.2回、宮西は29.2回。

 見る側とすれば頼もしいかぎりだが、同時に不安も覚える。これほど投げまくって、壊れないか。5、6点差の試合なら、他の投手を起用して平井を休ませればいいではないか。果たして、このままシーズン最後まで持つのだろうか――。

 周囲が不安を募らせるのは、増えていく登板数や投球数に加え、6月後半のピッチング内容も関係がある。

「クソでした......」

 前日にリーグ戦が再開した6月29日、オリックス戦で6対0とリードした8回の1イニングを無失点に抑えた平井は、クラブハウスに引き上げる前に第一声をそう発した。

「調整がうまくいってなかったです。ちょっと状態がよくないのが来ちゃって。内容がまったく。0点以下。採点できないレベルです、今日は」

 吉田正尚に痛烈なセンター返しを打たれ、福田周平にストレートの四球を与えた。それでも無失点に抑えたが、平井の表情は冴えなかった。理由を明かしたのは、翌日の試合後だ。

「ゼロで終わればいいというのは、去年までで終わりだと思っているので。ゼロで抑えるなかで、球数、内容、打ち取り方にこだわっていかないと、成長できないと思っています」

 前日、本調子でないことと疲労の関係を聞くと、即否定した。真偽は本人のみぞ知るが、プロの投手が公然で「疲れている」とは口にしないだろう。

 技術的には、投球時の身体の回転と腕の振りのタイミングが交流戦終盤から合っておらず、6月30日の試合前に見直したことで内容が改善された。ダルビッシュ有(シカゴ・カブス)が「毎日フォームは違う」と語るように、投球メカニクスは体調や環境など微細な変化に影響される。投げることで蓄積されていく疲労も考慮しながら、質の高い投球パフォーマンスを発揮することが今の平井には求められている。

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