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「左のライアン」がフォーム変更。
ヤクルトの次期エース候補が語る1年 (4ページ目)

  • 島村誠也●文 text by Shimamura Seiya
  • photo by Kyodo News

 プロ初勝利を挙げた試合は、まさに高橋の真骨頂とも言える勢いのあるピッチングだった。ここぞという場面での渾身の一球。たとえば、初回の無死一、三塁のピンチでネフタリ・ソト、筒香、ホセ・ロペスを3者連続三振で切り抜けたのだった。

「いちばん力が入ったというか、挑戦者の気持ちで投げたことが結果につながりました。その代わり、ほかのバッターに打たれてしまったので、そこは勉強になりました。今年は一軍で3試合投げさせてもらいましたけど、やっぱり一軍の打者は違うなと実感しました。二軍なら『この球なら振っていたのに』とか、『この球やったらファウルを取れたのに』というのがヒットにされたり......。抜けるところがなかったので、そこはもっと経験が必要だなと思いました」

 今年は2月のキャンプに始まり、公式戦、フェニックスリーグ、秋季キャンプとすべてに参加。来年の自分にどんなイメージを描いているのだろうか。

「もちろん一軍の試合で、中6日で投げるのが理想ですけど、中10日だとしても焦らずにやりたいと思っています。今年はフォームを変えましたけど、この(秋季)キャンプではみんなの前で『いつかまた、足を高く上げて投げたい』とスピーチしました。まだまだ知らない自分がいるはずなので......。そこからタイトルだったりに、何十年もやってからたどり着けたらいいかなと」

 最後に高橋の人柄が表れているエピソードを紹介したい。

 松山での秋季キャンプ。メイン球場の坊ちゃんスタジアムで"投内連係"が行なわれ、小川淳司監督はホームベース後方から練習を見守っていた。投手陣は三塁側のファウルグラウンドに並び、自分たちの順番を待っている。順番になり、ファーストへのベースカバーを終えた選手は小川監督の前を通り、もとの位置へと戻っていくのだが、高橋だけは監督のうしろを通っていったのである。たまたまかと思っていたが、2度目も同じく監督のうしろを通って戻っていった。そのことについて高橋に聞くと、こう返ってきた。

「人の前を横切るのって好きじゃないんです。これは高校生の時からです」

 どこまでも真っすぐで、一本筋の通った男。それが高橋というピッチャーである。

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