菊池雄星が好例。現代野球は「データリテラシー」が重要になる (3ページ目)

  • 中島大輔●取材・文 text by Nakajima Daisuke
  • photo by Jiji Photo

 昨年12月に行なわれた『スポーツアナリティクスジャパン2017』の「野球データ革命がもたらすもの」というセッションで、解説者の小宮山悟氏はそう語った。実際、菊池を見ていると、データリテラシーの重要性がよくわかる。

「結果が出ないときっていろんなことに手を出したくなるんですけど、自分の調子が悪くなるときは、この数字が落ちるとか、リリースポイントが後ろになってしまうとか、トラックマンを見ればわかります。だから、迷う要素がひとつ、ふたつ減るのが一番大きいと思いますね」

 菊池は試合が終わるたび、トラックマンのデータを専門家と一緒に分析し、普段の調整に活かしている。それが、防御率を5月4日時点の3.86からロッテ戦後に2.57まで改善させた背景にある。

 そして今、取り組もうとしているのがカーブのアップデートだ。現状は121キロ前後だが、あと3、4キロ速くしたいと言う。

「ストレートの球速が100%だとしたら、スライダーは92%くらい、カーブは70%前後が空振りゾーンで、それ以上遅くなると当てられるというデータがあって、照らし合わせながらやっています。統計でしかないですけど、実際、空振りを取れているカーブは、それに近いパーセンテージのところで推移しています」

 菊池にとって「第3の球種」という位置づけのカーブは、今季、投球におけるウエイトが高まった。昨季までは「カーブが甘く入って打たれたら後悔する」と信頼度が低かったが、今季は意識的に考え方を変えたからだ。

「去年は相手が真っすぐ、スライダーとわかっていても、真っすぐ、スライダーを投げていたんですけど、今年はそういうときにカーブを投げて救われています。春先、肩の調子がよくなかったからこそ、カーブを投げないと抑えられないところで去年以上にカーブの割合が増えていって、いつの間にかいいカーブになっていました」

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