名コーチが検証。巨人・岡本和真が
真の4番になるために必要なことは

  • 木村公一●文 text by Kimura Koichi
  • photo by Kyodo News

名コーチ・伊勢孝夫の「ベンチ越しの野球学」連載●第24回

 これまで「若手が育たない」と言われ続けている巨人にあって、今季開幕から好調を続け、ついに第89代4番に任命された4年目の岡本和真。プレッシャーをものともせず、ここまで打率.310、14本塁打、45打点の成績を残すなど、"不動の4番"として活躍を続けている。今季、岡本がブレイクした要因は何なのか? 真の4番となるために必要なことは何か? 近鉄、ヤクルトなどで名打撃コーチとして名を馳せた伊勢孝夫氏に、独自の視点で岡本のバッティングについて解説してもらった。

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今シーズン、開幕から好調を続けている巨人・岡本和真今シーズン、開幕から好調を続けている巨人・岡本和真 私が初めて岡本を見たのは、彼のプロ1年目、2015年のことだ。当時、私はヤクルトのバッティングアドバイザーをしており、主に二軍に帯同していたこともあって、彼のことはよく覚えている。

「内気そうな子だな」というのが第一印象だ。試合前の打撃練習でも、ほかの選手とほとんどしゃべらず、表情を変えるにしても軽くつくり笑いを浮かべる程度。高卒ルーキーなら無理もないことかもしれないが、試合で殊勲打を放ってもガッツポーズをするわけでもなく、気持ちを表に出すタイプではなかった。

 巨人のようなチームの、しかもドラフト1位となれば、それだけで注目度は違う。たいした実績のない者がヘラヘラしていたら、それだけで批判の的になる。だから、あえてそのような態度をしているのかもと思ったが、一軍の主力となった今でもあまり変わっていない。もともとそういう性格なのだろう。

 また、さしたる実績のない若い打者を一軍の試合で使う際、起用法は大きく分けて2通りある。ひとつは代打で使い、徐々に一軍のボール、配球に慣れさせる。もうひとつは、スタメンで起用し、とにかく打席に多く立たせて経験を積ませるやり方だ。

 どちらがいいのかはその選手の性格にもよるが、岡本の場合はスタメンで起用し、4、5打席与える方が向いているような気がした。たとえば、代打で起用した場合、1打席で結果を出そうと気負ってしまい、フォームを崩す心配も出てくる。それに比べてスタメンだと多く打席が与えられるから、気持ちに余裕を持って打席に立てる。岡本を見ていると、明らかに後者の方がいいと思っていた。

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