2018.06.29

菊池雄星が好例。現代野球は
「データリテラシー」が重要になる

  • 中島大輔●取材・文 text by Nakajima Daisuke
  • photo by Jiji Photo

 幕張に小雨が降る6月23日の昼すぎ、練習を終えてZOZOマリンスタジアムのクラブハウスに戻ろうとする菊池雄星の周りに、記者たちの輪ができた。登板翌日、先発投手が取材陣に囲まれることは珍しい。

今季8勝目を挙げて絶好調の菊池雄星 前日、ロッテ戦に先発して7回無失点で今季8勝目を挙げた西武のエースは、ある問いかけを残していた。

「フォームを試行錯誤して、6回からかなり変えました。どの辺? 映像で見てもらえればいいと思います」

 筆者を含め、映像を見ても変化をわからなかった記者たちが翌日、答えを求めて集まったのだろう。

「わからないくらいの微妙なところでやっているということです」

 暗に解答を求めた記者を、菊池はイタズラな笑みを浮かべて焦らした。前日、「気持ちよく腕が触れるところ」と話していたことから推測すると、腕を振る角度を変えたのだろうか――。

「去年と比べて今年は9センチくらいリリースポイントが上がっていたんですね。それを前回(6月15日の中日戦)、そこから3センチくらい下に戻して。これから(データが)アップデートされると思うんですけど、昨日(22日のロッテ戦)の6、7回はたぶん去年と一緒くらいのところで投げていると思います。そこが一番、『腕が振られる場所』なのかなという感覚はありました」

 ロッテ戦の6回、菊池のストレートは目に見えて力強さを増した。試合序盤は142キロを計測することもあったが、この回は150キロと唸(うな)りをあげる。通常、マウンドを降りる直前のイニングでは力をフルスロットルに開放し、その日の最速を記録することが菊池にとって珍しくない一方、ロッテ戦の6回は決してギアを上げたわけではないという。

 約10センチの微差に菊池が気づいたのは、6月8日の巨人戦に投げた後だった。

 データを確認すると、リリースポイントの高さがわずかに上がっている。前年と同じ投げ方に戻せばストレートの威力が上がることは想像に難(かた)くなかったが、15日の中日戦は僅差の展開だったためにリスクを冒さなかった。それから1週間後、22日のロッテ戦でリードが3点から5点に広がった6回に試すと、予想どおりのボールが放たれた。