菊池雄星が好例。現代野球は「データリテラシー」が重要になる (2ページ目)

  • 中島大輔●取材・文 text by Nakajima Daisuke
  • photo by Jiji Photo

「基本、身体の軸をどこに持っていくかという話なので。その角度を縦ではなく、少し斜めに修正すればいい。『腕を下げる』という意識より、側屈(そっくつ)角次第です」

 側屈とは、下半身に対して上半身を真横に傾けることだ。この角度をどうするかが、投球動作では重要だと菊池は言う。

 ポイントは「腕を振る」ではなく、「腕が振られる」という表現にある。

「側屈角が上がって腕が上がるのはいいんですけど、それが上がらずに腕だけが上がるとしたら、(肩や肘への)負担になってしまう。(今季序盤は)側屈角がそんなに出ていないのに腕だけ上がっていたので、(上半身単独で)腕を振るしかなくなっていました」

 側屈角の違いによるリリースの微差は、わずか10センチ。ロッテ戦後にデータを確認すると、菊池の感覚は正しかった。

「高さというより、腕を振る位置が身体から少し離れていました。10センチくらいですね」

 ロッテ戦の6回以降は、腕を振る位置が適度に身体から離れたことで、腕の角度が下がった結果、"腕が振られる場所"からリリースされて自身の求めるボールを投げることができた。こうした感覚にたどり着いた裏には、昨季途中に導入されたテクノロジーがある。

「何センチという差はビデオでは当然わからないので、『トラックマン』をうまく活用して今シーズンはやっています」

「トラックマン=高性能弾道測定器」は日本球界でもすっかり浸透し、現在は広島を除く11球団が本拠地に導入している。このテクノロジーにより、打者や投手のさまざまな感覚が可視化されるようになった。たとえば、昨季メジャーリーグで吹き荒れた「フライボール革命」では、打球角度30度前後、打球速度158キロ以上の場合に打球が飛びやすいと証明され、本塁打数が激増した。

「データを活用して成長できない選手は、淘汰(とうた)されていく時代になると思います」

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