わずか1勝の剛腕。それでも楽天・
安樂智大は信念を曲げずに復活を期す (2ページ目)
大きなエンジンを携(たずさ)え、それを自在にコントロールできるようにする。昨年の春、安樂はその目的を明確にしていた。
「車に例えれば、エンジンは大きくなったと思います。オフにそれだけの体づくりをしてきましたし、あとはそれを自在に操れるかどうかは、ドライバーである自分の技量というか。そのために、投球術とかを高めていかないといけないなと思っています」
オープン戦ではひと回り成長した姿があった。とりわけ、3月18日のヤクルト戦では、ストレートが走らず、変化球も浮き気味だったもののコースを丁寧に攻め、打たせて取る投球で6回無失点。オープン戦2試合で防御率2.45と結果を残し、開幕ローテーションの座を勝ち取った。
安樂が目標に掲げていた2ケタ勝利。誰もがそれを信じて疑わないほど、順調な仕上がりを見せていたのである。
ただひとつ、誤算があったとすれば、自身では初めてとなる開幕ローテーションに加わるため、春季キャンプからノンストップで駆け抜けたことだった。
目標を達成するため、ストイックなまでにトレーニングに励んだ。体のいたる箇所に張りを感じながらも、自身を追い込んだ。「開幕したら調整が多くなる。その時になったら、ケアをしていこう」と算段をつけていたが、その前に体が悲鳴を上げてしまった。
右大腿二頭筋部分損傷で全治8週間。セカンドオピニオンでも診断結果は変わらないほどの重症を負ってしまった。「もっと自分の体に気を配るべきでした」。安樂は自分の脇の甘さを正直に認めた。
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