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ニカラグア初の日本人選手に。
32歳スラッガーの世界トライアウト人生 (3ページ目)

  • 阿佐智●文・写真 text&photo by Asa Satoshi

 シーズン中は野球で禄(ろく)を食(は)み、オフになれば飲食店、測量、配送といった短期の職を探した。決して楽な暮らしではないが、技術が上がり、体力的にも問題がない以上、野球をやめる理由が見つからない。

「BCリーグは来年から年齢制限(27歳)を採用するみたいですが、『オーバーエイジ枠で来年も頼むよ』と一応、球団からは言われています。口約束ですけどね(笑)。嫁は不安だと思いますが、それでも『好きなようにやればいいよ』って言ってくれています」

 その妻の言葉に甘え、井野口はシーズンが終わると、決して安くない航空券を片手にニカラグアへと旅立った。ニカラグア人の母を持つチームメイトのツテを頼って、同国リーグ関係者と接触。この国一番の名門チーム、インディオス・デ・ボエルにテスト生として潜り込んだ。

 キャンプから参加し、わずか2打席だがオープン戦にも出場した。四球と犠飛という無難なデビューを飾ったものの、すでにチームは外国人枠を使い果たしており、"リザーブ選手"として欠員を待つことになった。

 日本の野球ファンには馴染みがないだろうが、ニカラグアは野球の盛んな国だ。この冬のシーズンを前に新たに建てられた国立の野球場には、この国の英雄であるメジャー通算245勝のデニス・マルチネス(オリオールズほか)の名前がつけられている。

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