2017.11.22

ニカラグア初の日本人選手に。
32歳スラッガーの世界トライアウト人生

  • 阿佐智●文・写真 text&photo by Asa Satoshi

 井野口祐介という選手を知っている野球ファンはほとんどいないだろう。ルートインBCリーグの群馬ダイヤモンドペガサスに所属している、今年32歳のベテラン独立リーガーだ。

 地元群馬の桐生市立商の主軸を担う外野手として甲子園出場経験はあるが、1回戦敗退しており、よほどの高校野球通でもない限り、その名は浮かんでこないはずだ。

電光掲示板用の撮影を終えた井野口祐介だったが...... その後、平成国際大に進むも芽が出ず、野球をやめようとした時期もあった。それでもあきらめきれず、2007年に卒業と同時に発足したBCリーグに参加。富山サンダーバーズの主砲として打点王に輝いた。

 翌年は地元群馬に誕生した新球団、ダイヤモンドペガサスに移籍。ここでも打点王を獲得するなど、BCリーグでは抜けた存在の選手だった。

 だが、ドラフトでは指名されなかった。プロのスカウトは、特に野手において、一芸に秀でた選手を独立リーグから獲得しようとする。逆に、井野口のようなバランスの取れた”正統派”は、高校、大学、社会人という野球界の本流から獲得するのが半ば常識になっている。プロ野球の世界で”モノになる”正統派野手が独立リーグなどに流れてくるはずがない、という考えがスカウトにあるらしい。

「たしかに、井野口は走攻守、全部揃ってはいるんだけどね……」

 彼を指導した独立リーグのある元プロのコーチの言葉は、実力がありながらも、井野口はプロ(NPB)入りしにくいタイプであると暗に語っていた。