石井琢朗コーチが感謝する、
「新井さん」が放ったチャンスでの凡打 (4ページ目)
「だから僕は新井に感謝しています。去年はこの新井が打つ方で、投げる方では黒田(博樹)という大黒柱がドンといたのが大きかった。その点、黒田がいない今シーズンの投手陣はキツかったと思います。もちろん、みんな頑張っていましたけど、波があったし、特に8月は苦しかった。それはもう数字がどうというよりも精神的な部分で。ここで黒田みたいなベテランが音頭を取って、若い選手を叱咤してくれたらなあと、打撃コーチとしても思うときはありました。それこそ、甲子園で9点差をひっくり返された試合がそうでした」
5月6日の対阪神戦。広島は5回までに9対0とリードしながら投手陣が乱れ、終わってみれば9対12と大逆転負けを食らった。打線の強さが目立つ一方、投手陣の不備が指摘されがちな今季の「力差加減」を象徴する試合展開――。若い投手たちに向かって、「お前ら、なめられてんじゃねえよ! もう少し頑張れ!」と一喝する黒田の声が、石井の脳裏に響いた。そんなひと言を発するベテランがいたら雰囲気はまったく違ったのに、と思った。
「今シーズンのポイントでした、あの試合は。ここから落ちていくのか、這い上がっていくのか、分かれ目だったと思います。コーチとしても悔しかったですけど、でも、これは打つ方は教訓にしようと。シーズンが終わったときに、『あの試合があったからオレらはここまで来られた』って言えるように。だから何点差あっても、とにかく点を取れるときは取るんだと。あらためて意識が高まったと思います」
つづく
(=敬称略)
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