2017.10.14

石井琢朗コーチが感謝する、
「新井さん」が放ったチャンスでの凡打

  • 高橋安幸●文 text by Takahashi Yasuyuki
  • 西田泰輔●写真 photo by Nishida Taisuke

【連載】チームを変えるコーチの言葉〜広島東洋カープ打撃コーチ・石井琢朗(2)

(前回の記事はこちら)

今シーズン限りで広島を退団することになった石井琢朗コーチ アウトもムダにしない打撃、後ろにつなぐ野球――。

 今シーズン限りでの退任を発表したが、広島の打撃コーチ・石井琢朗が提唱する攻撃の理念は、リーグ連覇の大きなファクターとなった。実際、チーム打率と得点を見ると、昨年の広島は.272、684でいずれも12球団トップ。今年も.273、736は12球団一と、昨年ほどの安定感がない投手陣をカバーした形だ。「7割の失敗」も生かして貪欲に点を取ろうとする意識が、選手に浸透した証(あかし)だろうか。石井に実情を聞いた。

「まずひとつは、去年と比べてそんなに選手が変わらなかったこと。もうひとつは、昨シーズン選手個々に数字を残して、チームが優勝できたこと。それがすごく今シーズンの自信につながったと思います。最低限、こういう攻撃をすればチームとして大崩れはしないと、肌で感じてきたんじゃないかな。逆に言うと、去年のシーズン当初は、選手の方に『半信半疑』っていう気持ちがあったと思うんですよ」

 打率3割を残せる技術を身につけヒットを打ち、チャンスではランナーを還す打撃で打点を稼ぐ。これを目標とする選手たちが、3割という成功のみならず、凡打という「7割の失敗」も生かして点を取りにいくという方針を示されるのだ。「半信半疑」も仕方ないだろう。戸惑いもあっただろう。

「半信半疑といっても、僕が示した方針は新しいものじゃないんです。最低限の攻撃は当たり前だし、選手もすぐ理解はしてくれました。ただ、それでもチャンスの場面で打席に立ったら、なかなかそうはいかない。きれいなヒットを打ったなかで1点を取りたい、という気持ちがすごく強いんで。だから、しつこいぐらいに言いました。実行するのは選手で、僕らコーチは本当に『言うは易し』で、言うことしかできません。試合ではグラウンドに立って選手と一緒に動けるわけじゃないですからね。そういう意味でも、僕らが重点を置いたのは、いかに意識を持たせるかというところでした」