経験者が明かす「優勝チームがCSまでに
試合勘が鈍る」という状態

  • 木村公一●文 text by Kimura Koichi
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

名コーチ・伊勢孝夫の「ベンチ越しの野球学」連載●第10回

 今シーズン、セ・リーグを制した広島、パ・リーグを制したソフトバンクの強さは、他のチームと比べて頭ひとつ抜け出している印象を受けるほど圧倒的なものだった。しかし、だからといってクライマックスシリーズ(CS)を絶対に勝ち抜けるとは限らない。1勝のアドバンテージがあるとはいえ、何が起こるのかわからないのがCSの面白さであり、怖さでもある。優勝チームだからこそ味わう調整の難しさと心理的不安......これをどのように克服していけばいいのだろうか。近鉄、ヤクルトなどでコーチを務め、短期決戦の怖さを知る伊勢孝夫氏に解説してもらった。

(第9回はこちら)

チームトップの92打点を挙げるなど、広島打線をけん引する丸佳浩チームトップの92打点を挙げるなど、広島打線をけん引する丸佳浩 あれは今から3年前、2014年のことだ。巨人が2位の阪神に7ゲーム差をつけてリーグ優勝したにもかかわらず、CSファイナルステージで1勝のアドバンテージがありながら阪神に4連敗を喫し敗退した。

 言うまでもなく、優勝チームに与えられる1勝のアドバンテージは大きい。さらに先発投手のローテーションも、CSファーストステージを勝ち上がってきたチームと比べれば余裕がある。優勝チームが圧倒的有利なことは間違いない。それでも、前述した巨人のように、シーズン中とはまるで別人のチームになってしまうこともあるのが、短期決戦の怖さだ。

 もちろん、その最大の理由は、公式戦が終了し、CSファイナルステージまで時間が空くことだ。チームによっては実感覚を鈍らせないため、宮崎で行なわれているフェニックスリーグに参加したり、社会人のチームと練習試合をしたり、それぞれ対策を立てているようだが、これをやればいいという答えがないのも事実である。

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