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投げた瞬間「あっ、右腕がとれた!」。
森慎二が振り返る、悪夢の脱臼 (3ページ目)

  • 元永知宏●取材・文 text by Motonaga Tomohiro
  • photo by Thomas Anderson/アフロ

脇腹から右腕が生えている......

──当然、凄まじい痛みが襲ったと思いますが......。

「それはもう、ものすごい痛さで、えづくほどでした。そのときに自分のなかにあったのは、『痛い!』というのと『もう終わったな』という感情が半分半分。腕がポロンと落ちるんじゃないかと感じたので、本能的に左手で右腕を支えました。でも、関節が外れているから、重くて重くて......自分の腕とは思えないくらい。そのままの体勢ではいられなかったので、マウンドにしゃがみ込んで、右腕を足の上に置きました」

──本当に一瞬のことですよね。

「上腕の骨頭が脇腹に当たりゴリゴリしているのがわかって、『まだついている』と気づきましたが。脇腹から腕が生えているような感じ」

──冷静でいることはできましたか。

「いやいや、痛さと絶望感で、あのときの記憶は定かではありません。そのままカートに乗せられて、トレーナールームに連れていかれました。写真を撮ってもらおうと思ったんですけど、まわりがそんな雰囲気ではなくて、かなり深刻だったことをはっきりと覚えています。右腕の感覚もないし、原型をとどめてないだろうなと覚悟しました。裸になったら、人間の姿はしていましたけど」

腕が脇腹のあたりにある感じ.....と説明する森慎二コーチ photo by Motonaga Tomohiro腕が脇腹のあたりにある感じ.....と説明する森慎二コーチ photo by Motonaga Tomohiro

──本当に腕が飛んでいったと感じたのですね。それからどんな処置をされましたか。

「テープで肩を固定して、アイシングをしながら病院へ直行しました。脱臼といえば大相撲の千代の富士のイメージがあって、無理やりに肩を入れるのかと思ったのですが、ちょっと違いました。診察台の上にうつぶせに寝て、右腕を下ろし、手首に重りをつけた状態で『リラックスしろ』と言われました」

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