投げた瞬間「あっ、右腕がとれた!」。
森慎二が振り返る、悪夢の脱臼 (2ページ目)
──メジャーリーグのボールは、日本とは大きさも手触りも異なります。マウンドはコンクリートのように硬い。当然、気候も全然違います。もちろん、言語やトレーニング方法も。
「そうですね。日本と違うところはたくさんありました。でも、ボールの違いもマウンドの硬さにも、すぐに対応できました。日本だとリリーフでマウンドに上がるときにはボコッと掘れていることが多くて、リリーフ投手としては投げにくいときもありましたが、アメリカではその心配がありませんでした。やりにくさを感じたのは、投球練習の球数が制限されていたことくらい。それも、練習後に遠投を増やすことで不安は解消できました」
──気候についてはいかがでしたか。
「春季キャンプはフロリダで行なわれたのですが、太陽が出ているときは乾燥しやすいなと感じたものの、暖かいので汗も出て、僕にとってはやりやすかった」
──ところがキャンプ中から右肩に違和感があり、何度かオープン戦の登板を回避しました。そして開幕を控えた3月20日、森さんはついにオープン戦のマウンドに上がりました。
「結果的には、もっと慎重にやればよかった。あのとき、投げなければよかった。原因はひとつではなかったのですが、どれかひとつでも取り除くことができれば、あんなことは起こらなかったと思います。
その前に違和感があったときに、軽い肩の肉離れをしていたのかもしれません。でも自分では『大丈夫、投げられそうだ』と思ったので、マウンドに上がりました」
──3球目を投げた瞬間、マウンドでうずくまってしまいました。
「ボールを離す直前に、肩がポコッと外れてしまいました。超合金ロボットのおもちゃの部品が壊れるみたいに。『あっ、右腕がとれた......』と思いました。正確には後ろに外れたのですが、自分としては『腕が飛んだ』ように感じました」
──そのとき、何を思いましたか。
「これは『もう終わったな』と......二度とボールは投げられないと」
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