巨人・原辰徳監督の「愛情」と「非情」の10年を振り返る (4ページ目)

  • スポルティーバ●文 text by sportiva
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

 シーズン残り4試合で巨人が優勝するには全勝しかなかった。しかし、9月28日の甲子園での阪神戦に敗れ、優勝はほぼ絶望的となり、首脳陣はポストシーズンの戦いを視野に入れはじめた。その時、突然、原監督が斎藤コーチに「内海はどうしている? 一軍に呼ぼうか」と告げた。斎藤コーチは驚いた。

 なぜなら、内海は8月19日の阪神戦で4回持たず3失点でKOされ、正直、今季の一軍昇格は厳しいだろうと斎藤は思っていたからだ。なにより、二軍降格を決めたのは原監督であり、斎藤コーチは「チャンスを与えてあげてほしい」と何度も頼んでいた。だから、今シーズンの登板はないと思っていた。

「監督から内海に連絡しろと言われ、その日の夜、ホテルから電話をしたんだ。降格してからどんな練習をしていたのか、詳しくはわからなかったけど、『コンディションが良くない』とか『今は投げたくない』とか、来季に向けて動き出しているようなら一軍に上げないと決めていた」

 しかし、一軍昇格を伝えると、内海は「やります」と力強い言葉で即答した。内海は残り試合が少なくなっても、一軍のマウンドで投げることを目標に練習に励んでいた。そして原監督は再び内海にチャンスを与えた。

 内海は「他の選手に申し訳ないけど、呼ばれた以上はやるしかない」と監督の思いに応えるように、シーズン最終戦で登板し好投。CSのベンチ入りメンバーの座を勝ち取った。

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