楽天・安樂智大、プロ初勝利も「ダメ出し」をした父の思い (2ページ目)

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • photo by Kyodo News

 ある記者が、「立ち上がりからストレートで押していましたが......」と質問したが、確かに初回から2回は46球中、変化球はわずか5球。ただ、真っすぐで押しているというより、スライダー、カーブでストライクが取れない"苦肉の策"のようにも思えた。

 事実、安樂も「ブルペンで変化球の調子が良くなかったので、嶋(基宏)さんからも『ストレート中心で行こう』という話があった」と振り返った。要するに、ストレートも変化球も良くなかったということなのだが、それでも抑えられたのは、やはり本人が言うように「ストレートの質」が上がったからなのか。

 質が上がった理由を安樂に尋ねると、こんな答えが返ってきた。

「いちばん変わったのはフォームです。高校時代はもっと暴れていて、150キロが出ていても棒球というか、生きた球ではありませんでした。でも今は、140キロ前半でも球がビュンってきている感覚があります」

 ただ、安樂の魅力は......と考えた時に、高校時代のあの豪快な投げっぷりを目にし、本人の熱い思いを耳にしてきた者とすれば、プロ初登板の内容には物足りなさが残った。そして、同じ思いをストレートに口にした人物がいた。安樂の父・晃一さんだ。

「ストレートの質が大事なのはわかります。でも、まだ19歳ですから。150キロの棒球といっても......これまで求めてやってきたものはなんだったのか。私は安樂智大の一番のファンだと思っていますけど、初登板のピッチングはワクワクしなかった。『上甲さんとの約束はどこにいったんや!』と言いたいです」

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