楽天・安樂智大、プロ初勝利も「ダメ出し」をした父の思い

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • photo by Kyodo News

 秋の気配を含んだ冷たい風が突きつけていた10月5日のナイトゲーム。コボスタ宮城で行なわれたソフトバンク戦で楽天ファンの希望の星がプロ初先発、初勝利を飾った。今年のドラフト1位・安樂智大だ。

10月5日のソフトバンク戦でプロ初登板、初勝利を飾った楽天・安樂智大10月5日のソフトバンク戦でプロ初登板、初勝利を飾った楽天・安樂智大

 入団時に「1年目から開幕ローテーションを目指します」と語り、チームの先輩である田中将大について問われると、「いつまでも憧れと思っていてはダメ。プロでやるからにはライバル」と言い放った。そんな大きい目標を掲げてシーズンに臨んだ安樂だったが、イースタンリーグで19試合に登板し、4勝1敗、防御率2.57。計49イニングで被安打41、奪三振35、四死球15という内容だった。高卒1年目としては悪い数字ではないが、掲げた目標には遠く及ばない結果となった。

 それでも9月23日のイースタンリーグの西武戦で9回を3安打無失点に抑える好投を見せ、ようやく一軍昇格を果たしたのだった。

 10月5日の試合後、安樂は「勝ててほっとしています」と安堵の表情を浮かべ、次のように語った。

「真っすぐはあまり調子が良くなかったんですけど、高村(祐)投手コーチにも言ってもらったように、指にかかるストレートとかからないストレートがあったから、バッターは狙い球が絞りにくかったのだと思います。指にかかったストレートでファウルや内野フライが取れましたし、球の質はこの1年間取り組んできたところなので、少しは成果があったかなと思っています」

 この日の最速は初回に出た146キロで、2回以降は137~141キロが大半。高校2年時に150キロ台を連発し、最速157キロまで球速を伸ばしていった姿とは重ならなかったが、その球をソフトバンク打線は捉えられなかった。

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