【根本陸夫伝】試合中にもかかわらず下柳剛を延々と説教した男 (2ページ目)

  • 高橋安幸●文 text by Takahashi Yasuyuki
  • photo by Kyodo News

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「案の定ですよ。『来たよ、間違いなく怒られる。どやされるわ』と思ってました。それで食事会場に行って、後ろにいて呼ばれたりするの嫌やなと思ったんで、まずオヤジの目の前に立った。そしたら、こう言ったんです。『今日は、私のミスで負けた。すまなかった。集まってくれてありがとう。以上!』。かっこええな、このオヤジって思いましたよ。しかも、ひと言でスーッといなくなる。だから選手みんな、「次はちゃんとせないかんやろう」という雰囲気になりましたね」

 その日から1週間後の6月12日、福岡ドームでのロッテ戦。下柳はプロ初先発を果たす。5回2/3を投げて被安打8、5失点で敗戦投手となったが、以降、8月まで先発陣の一角を担った。首脳陣に信頼される投手になりつつあったが、真夏の西武球場での西武戦。試合中のベンチ内で、根本の怒りを買う出来事があった。

 リリーフで登板した下柳が、外国人選手を打席に迎えた時のこと。ストライクを先行して追い込んだ後、ベンチからの指示でアウトコースにボール球を投げた。ところがそのボール球を打たれ、タイムリーヒットになった。チェンジになってベンチに帰ると、根本に声をかけられた。

「お前、なにストライク投げてんだよ」
「いや、オレが投げたのはボールです」
「バットに届いて、ヒットになったらストライクなんだよ」
「いえ、オレはちゃんと指示どおりにボールを投げました」
「届く球はストライクなんだ!」
「あれはボール球や。絶対、ボール球や」
「何回言ったらわかるんだ、馬鹿野郎! バットが届くところはストライクゾーンじゃ!」
「いやボール球です」
「まだわからんか!」

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