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ケガにも負けず。中日・山本昌「目標は岩田鉄五郎」

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • photo by Kyodo News

 わずか一球で緊急降板――。

 ドラゴンズの山本昌は3月3日、今シーズン初めてとなる対外試合、教育リーグのホークス戦で右ヒザを痛めて、わずか一球で降板した。初球のストレートを投げた際、「ヒザがゴリッと言った」(山本昌)とのことで、それまでに投げていたふたりのピッチャーが掘ったマウンドの窪みと窪みの間にできたわずかな山に右足を乗り上げてしまい、ヒザを外側に捻ったのだという。山本昌は「歩くのは問題ないけど、曲げたら痛い」とコメント。病院で『右膝蓋靱帯(しつがいじんた い)炎』と診断され、調整プランの見直しを迫られることとなった。

プロ32年目、今年8月で50歳になる中日・山本昌プロ32年目、今年8月で50歳になる中日・山本昌

 山本昌を見たのはその一週間前、2月25日のことだ。

 ちょうどランチタイムで、フィールドには誰もいない。ドラゴンズの二軍がキャンプを行なっている沖縄の読谷平和の森球場は不思議なくらい、静まり返っていた。

 そのとき、背番号34がのそっとグラウンドに現れた。

 山本昌、49歳――球界のレジェンドは今年も二軍キャンプでの調整を続けており、このあと、今キャンプ初のシート打撃に登板することになっていた。そのための準備を始めるために、他の選手よりも早くグラウンドへ現れたのである。

 芝の上にしゃがんで、丁寧なストレッチ。
 大きな体を弾ませて、ダッシュ。

 改めて49歳という年齢のことを思えば、その軽快な動きには目を疑うばかりだ。

 強い陽射しの下、キャンプの総決算としてバッターを相手に初めて投げる......32年目であっても、その緊張感は十分に伝わってくる。おもむろにマウンドへ上がった山本昌は、いつものように振りかぶって、第一球を投じた。

 まずは、ストレート。
 次は、カーブ。
 そしてスクリューボール。

 山本昌は、この三つの球種を丁寧に投げ続けた。

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