松坂大輔、「完全復活」への3つのチェックポイント (2ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

 股関節と肩甲骨。

 ここの意識がうまくいった時、松坂の右腕は恐ろしいほどのしなりを生む。実際、キャッチボールでも右腕がムチのように体に巻き付いて、指先が背中を弾いていた。

 さらに、もうひとつ。

 松坂は、普段からキャッチボールは平地で行なうということを意識している。なぜなら、マウンドには傾斜があるからだ。松坂のキャッチボールが他のピッチャーと違って見えるのは、平地の真っすぐは傾斜のあるところでは真っすぐではないということを、彼が理解しているからに他ならない。

キャッチボールだけを見ていると、松坂の上体はややそっくり返り、ボールを前で離すというより、リリースが高くて早過ぎ、極端な話、ボールを投げ上げているような印象を受ける。しかしこの形を傾斜のあるマウンドで再現すると、リリースは前になる。かつて、メジャーの硬いマウンドのせいで股関節を痛めた松坂が、最小限の負担で効率よく力のあるボールを投げるためにようやく作り上げた、彼ならではのフォームなのである。

 思えば、松坂のフォームは8年周期でひとつの完成形を極めてきたような気がする。

 1998年型、それが横浜高校時代のフォーム。

 2006年型は、ライオンズで円熟期を迎えた、日本式のフォーム。

 そして2014年型が、ようやく作り上げたメジャーのフォームだ。

 つまり松坂は、これまでに3つの異なるフォームを作り上げてきたことになる。もちろん、すべてが理想の形というわけではなく、結果として3つになったのは、環境の変化やケガによる体の変化に対応する必要があったからだ。

 そして今のフォームは、メジャーで作り上げた完成系の延長線上にある。肉体のバランスも、年齢も、ヒジの状態も、何もかもが8年前とは違う。日本に戻ってきたからといって、簡単に8年前のフォームに戻せるというものではない。

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