松坂大輔、「完全復活」への3つのチェックポイント

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

 見るべきはブルペンだけではない。

 今の松坂大輔を理解するためには、キャッチボールにもいくつかの大切なポイントがある。

キャンプ初日の松坂は、じつに丁寧なキャッチボールをしていた。振りかぶって右足で立つ。その時、彼はトントンと2度、3度、右足だけでジャンプする。これは右の股関節に上半身を正確に乗せるための確認作業である。

キャンプ第1クールでは確認作業に時間を費やしている松坂大輔キャンプ第1クールでは確認作業に時間を費やしている松坂大輔

 そのために松坂がふだんから欠かさないトレーニングがあった。

 縄跳び、それも二重跳びだ。

 上体を真っすぐに保ったままの二重跳びは、股関節に上半身を乗せる意識を磨き、その感覚を体に覚えさせてくれる。だからアメリカにいる時から、松坂は家にいるときも二重跳びを欠かさなかった。

 上半身が股関節に乗ったら、右腕の位置を確かめる。

 今度は肩甲骨に右肩を入れる作業である。プレートからホーム方向へ下半身が体重移動していくとき、回転する上半身に右腕がついていけないと、右腕が顔から離れてしまい、肩ヒジに負担がかかる。だから腕を上半身と一緒に回すために、しっかり右肩を肩甲骨に入れることを意識しなければならない。もちろん4年前にメスを入れた右ヒジを守るという意味合いもあるが、何よりもこのわずかな間の一動作が、松坂のボールに相手のバットをグッと押すだけの力を与えてくれるのだ。

 じつはこの動作、松坂は子どもの頃から得意としていた。

 なぜなら彼は、剣道をやっていたからだ。剣道における竹刀の使い方は、肩甲骨をうまく使えるかどうかで決まってくる。肩甲骨が肩にうまく入れば、腕だけで振るよりも竹刀は一伸びも二伸びも違ってくる。

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