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崖っぷちの広島に、前田智徳が託した最後の思い (2ページ目)

  • 大久保泰伸●文 text by Ohkubo Yasunobu
  • photo by Nikkan sports

 前田は今季4月の試合で右手に死球を受けて骨折し、復帰に向けて長いリハビリ期間が続いた。シーズン終盤の9月には、同じく死球で左手を骨折して一軍を離れた堂林翔太に3時間にも渡って自らの打撃哲学を語ったという。今から思えば、引退を決意した前田から、カープの将来を担うホープに対する、最後の助言だったのかもしれない。

 CSファイナルの第2戦、カープは菅野智之の前に完封負けを喫した。前田は、「初めての解説で、カープがこんな残念な結果になってしまって。僕はやっぱり持ってないですね」と、現役時代にしばしば見られた自虐的なコメントで周囲を笑わせた。

 それでも最後は、「緊迫した試合をしてくれて、それだけでうれしい。熱いものもある。なんとか1勝して、流れを変えてくれれば......。最後にもう一回、粘りを見せて欲しい」と、後輩たちの奮起を期待した。

 その思いは監督や選手たちも同じだった。野村監督は、「王手をかけられたが、ひとつのきっかけで変わると思う」と語り、菊池は、「全部負けるわけにはいかない」と力を込めた。

 思えば、前田の現役生活は、二度のアキレス腱手術をはじめ、数々のアクシデントに見舞われた。それでもあきらめず、ひたむきな姿勢で2000本安打を達成するなど、輝かしい栄光を勝ち取った。崖っぷちのカープに、背番号「1」の意思は受け継がれるのか。奇跡の反撃に期待したい。

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