検索

【夏の甲子園2026】横浜・村田浩明監督が説く「打ってから走るはナンセンス」 勝負を分ける「0.1秒」の走塁術

  • 氏原英明●文 text by Hideaki Ujihara

 そんなわずかな隙さえ突いてくるのか──。神奈川県大会準々決勝の横浜対市ヶ尾の試合を見ながら、横浜のあるプレーに目を奪われた。

 6回裏二死二塁から、2番・小林大雅がレフト前にヒットを放った。二塁走者が本塁を狙うなか、市ヶ尾の左翼手・溝口隆太は本塁へ送球し補殺を狙ったが、三塁手の恩賀龍之介が送球をカット。本塁で走者を刺すのをあきらめ、打者走者を刺そうと二塁へ転送した。しかし、小林はすでに二塁へ到達していた。

 最速157キロを誇る織田翔希の存在によって優勝候補に挙げられる横浜だが、見逃してはならない強みがある。それが"走力"の高さだ。

 ただし、ここで言う"走力"とは、単に盗塁の多さを指すわけではない。相手守備のわずかな隙を見逃さず、次の塁を奪う走塁技術と判断力である。

打つだけでなく、走塁でも高い意識を見せる横浜の4番・川上慧 photo by Ryuki Matsuhashi打つだけでなく、走塁でも高い意識を見せる横浜の4番・川上慧 photo by Ryuki Matsuhashiこの記事に関連する写真を見る

【横浜に染みついた"一打二走"】

 この夏の甲子園でも、その意識は随所に表れている。2回戦の日南学園(宮崎)戦で目を奪われたのは、6回表一死一塁の場面だった。5番・江坂佳史がライトへ飛球を放つと、右翼手が落球。一塁走者の川上慧はすかさず二塁を蹴り、三塁へ向かった。日南学園の守備陣が慌てて三塁へ送球すると、今度は打者走者の江坂が二塁を陥れた。

 紙一重のところで江坂はアウトになったが、判定が出るまでの一瞬の隙を突き、川上は本塁へと走り出した。結果、川上もアウトになったが、横浜が目指す野球が凝縮されていたように思う。

 普通のチームなら、右翼手が落球した時点で一死一、二塁にとどまっていても不思議ではない。だが、横浜はそこから一死二、三塁をつくろうとし、さらにその先の1点まで奪おうとした。

 結果だけを見れば、ふたつの走塁はいずれも失敗に終わった。だが、相手にわずかな隙があれば次の塁を狙い、さらに得点の可能性まで探る。その意識の高さは普通ではない。

1 / 5

  • Googleで優先するソースとして追加

Googleの「優先ソース」について

著者プロフィール

  • 氏原英明

    氏原英明 (うじはら・ひであき)

    1977年生まれ。大学を卒業後に地方新聞社勤務を経て2003年に独立。高校野球からプロ野球メジャーリーグまでを取材。取材した選手の成長を追い、日本の育成について考察。著書に『甲子園という病』(新潮新書)『アスリートたちの限界突破』(青志社)がある。音声アプリVoicyのパーソナリティ(https://voicy.jp/channel/2266/657968)をつとめ、パ・リーグ応援マガジン『PLジャーナル限界突パ』(https://www7.targma.jp/genkaitoppa/)を発行している

フォトギャラリーを見る

キーワード

このページのトップに戻る