原監督の1年。巨人独走を実現した「3つの采配」

  • text by Sportiva
  • photo by Masuda Yuichi

 感激よりも安堵が上回った笑顔だった。

 9月22日、リーグ連覇を成し遂げて、宙に8度舞った巨人の原辰徳監督。2位・阪神に10ゲーム以上の差をつけての独走だったが、決して順風満帆ではなかった。優勝が決まった瞬間の指揮官のホッとしたような表情が、すべてを物語っていた。

昨年に続いて巨人をリーグ優勝に導いた原辰徳監督。昨年に続いて巨人をリーグ優勝に導いた原辰徳監督。
 監督生活10年目。節目のシーズンでの連覇達成だった。胴上げ直後の公式記者会見。原監督の独特な言い回しに、シーズンを通しての本音が隠されていた。

「シーズンが始まって、いろいろ戦ってきて......、あるいは多少悩みながら、喜びながら......。そういう中で戦ってきて、改めて(優勝できて)良かったな、と。新鮮に、常に新鮮に感じて、(優勝を)喜びました」

 3年ぶりのリーグ優勝を果たした昨年は、自身の監督生活最高勝率.667で、貯金43とぶっちぎりの優勝だった。「2012年度のチームは、洗練されていた。試合を重ねるごとに成長できたチームだった」と評していた。2013年は、その洗練されたチームに、さらなる強さを上積みできる。そう感じた原監督は今年はじめ、監督生活で初めてとも言える言葉をナインの前で口にしていた。

 キャンプイン前日の1月31日、宮崎県宮崎市内の宿舎ホテルの一室。ミーティングで「日本一連覇を目指して戦おう」と宣言した。

 リーグ優勝した翌年は、必ず「横一線でスタートする」と口にしていた。勝つ度になお、自身にも言い聞かせるように、ナインにはゼロからの出発と繰り返した。だが、今年は違った。優勝候補の筆頭とされる中で、あえて連覇を狙う。他球団のマークを受けながら、それを跳ね返す力を選手に求めて、同時に結果も出す。その自信があった。

 しかし、事は思いどおりに運ばなかった。誤算のひとつは投手陣だった。

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