斎藤佑樹、嬉しくなかった登板で得た最大の収穫 (4ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • photo by Nikkan sports

 斎藤が投げた78球のうち、イメージ通りの低い弾道でストライクを取れたボールは10球足らずだったのではないだろうか。思えば以前、斎藤が自身の投げるボールのイメージを“ライフルの銃身”に喩(たと)えたことがあった。始動してからリリースの瞬間まで、右手に持っているボールをライフルのような長い銃身を通すイメージで投げる。そういうフォームを理想に掲げた。ピストルのようにボールを離す瞬間だけに力を入れるのではなく、テークバックからリリースまで、長い銃身を通すように均等に、安定した力をボールに与え続けることで、肩にかかる負担を分散させる。なおかつ、長い銃身を利用することでリリースポイントを安定させ、フォームに一貫性を持たせる。

 ピストルのように一瞬、力を入れれば強いボールを投げられる。

 しかしライフルを使いこなすには、全身の力をバランスよくボールに伝えなければならない。

 そのために体の使い方を模索し、使いこなせていなかった筋肉を鍛え、理想のフォームを会得するトレーニングを続けてきた。

 斎藤が目指してきた、三つの着地点。

 第一に、肩に負担のかからないフォームを固めること。
 第二に、そのフォームでキレのあるボールを投げること。
 第三に、しかも正確なコントロールを身につけること。

 この半年、取り組んできた肩に負担のかからないフォームの土台は、まだ道半ばとはいえ、その原型はかなり固まってきている。理論的には、そのフォームが身につけばキレのあるボールが投げられるはずだ。同時に、フォームが安定すればコントロールも安定する。

 しかしその前に、つい力が入ってしまう自分との戦いがある。つまり、今の斎藤が戦っているのは自分自身であり、求めているのはそうしたジレンマからの解放なのだ。

 それでも、力んで投げて、痛みが出ないことは確認できた。

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