斎藤佑樹、嬉しくなかった登板で得た最大の収穫
いったいなぜ、この時期に一軍で投げさせる必要があったのか。
まして、二軍の試合で先発して3回を投げ切ることができず、9失点でノックアウトを喰らってから、まだ2週間も経っていない。今シーズン、彼が二軍で残してきた数字は、1勝3敗、防御率8.61。つまり、結果を残しての昇格とは言い難い状況だ。
それでも斎藤佑樹はこの日、今シーズン初めてとなる一軍のマウンドに上がった。
昨年の日本シリーズ以来の一軍マウンドとなった斎藤佑樹だが、5回途中6失点で降板した
10月2日、札幌ドーム。
斎藤はバファローズを相手に、78球を投げた。
打たれたヒットは5本、すべてシングルで長打は許さなかった。しかし四死球を6個も与え、失点にはことごとくフォアボールが絡む。立ち上がりから思うようにボールをコントロールできず、高めに浮くボールも多かった。ヒットとフォアボールの連鎖の挙げ句、ランナーが溜まったところでタイムリーを許す。
5回途中、斎藤は5点を失ったところでマウンドを降りた。残したランナーも還って、結局は6失点で負け投手となる。一軍のマウンドは昨年、11月1日の日本シリーズ第5戦以来、335日ぶり。だからといって特別な緊張を感じるような斎藤ではないが、今の状態を万全だとは思えていないのならば、当然、不安は拭えなかったはずだ。試合後、斎藤はこの日を迎えた気持ちをこう話していた。
「不安もありましたし、肩の状態が回復してきてからもなかなか思うように投げられなかったので複雑な思いもありました。それでもいろんな方がよかれと思って登板させてもらったので、何かのきっかけになればと思っていました」
今の斎藤は、どんなきっかけが欲しかったのだろう。
ほぼ2週間前、ファームでめった打ちを喰らった試合のビデオを見ながら、斎藤は「もうちょっといいように、もうちょっといいフォームで投げようと心掛けたら力んでしまっていた」(斎藤)ことに気づく。練習ではうまくいくのに、バッターが打席に立つとうまくいかなくなる。三振を取ろうとすると、ボールに力を込めようとすると、つい力んでしまう。ファームの試合でさえそうなのだから、一軍の試合になればもっと力が入ってしまう。
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