バレンティン、ブランコは「55本塁打」を超えられるか? (3ページ目)

  • 津金一郎●文 text by Tsugane Ichiro
  • photo by Nikkan sports

 しかし、本当の敵は、両選手が後半戦でホームランを量産し、“55”という数字に近づくほどに現れるのかもしれない。

 1964年シーズンに巨人の王貞治(現・ソフトバンク球団会長)が樹立したシーズン55本の日本記録に、これまで何人もの外国人選手が迫りながら、達成できなかった。

 1985年は阪神を21年ぶりの優勝に導いたランディ・バースが54本塁打で巨人との最終戦を迎えたが、5打席4四球で55本に並ぶことはなかった。2001年にはシーズン終盤の試合、55本に並んだ近鉄のタフィ・ローズがダイエー(現・ソフトバンク)バッテリーのボール攻めにあい、結局タイ記録でシーズンを終了。その翌年には、西武のアレックス・カブレラが5試合を残して55本塁打を放つも、新記録更新はならなかった。当時は「外国人選手に王さんの記録を破られるわけにはいかない」と話すコーチもいたという。

 王貞治の55本を抜くプレッシャーが、バレンティン、ブランコを襲わないとは限らない。しかしファンは、2004年にイチローが262安打を放ち、「メジャーリーグで最も破るのが困難な記録」と言われたジョージ・シスラーの257本のシーズン最多安打記録を塗り替えた偉業を、アメリカ中から国籍を問わずに賞賛された姿を知っている。

 国際化を唱えるプロ野球界が、真の意味で変貌を遂げることができるのか。それはオランダとドミニカからやってきたホームラン打者のタイトル争いの先に待っている。

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