ダルビッシュ有も田中将大も転機は「プロ2年目」だった

  • 益田佑一●写真 photo by Masuda Yuichi

吉井理人の「投究論」 第3回

 開幕から無傷の14連勝を飾った楽天の田中将大。「なぜ勝てるのか」「どうして負けないのか」と思っている人は多いと思います。なかには、これだけの結果を残しているので、今年の田中は絶好調だと思っている方もいるでしょう。でも実際は、それほど調子がいいとは思いません。徐々にいい時の田中に戻りつつあるかなと思いますが、シーズン序盤は「よく負けなかったな」というのが本音です。それぐらいバランスも悪かったですし、ボールのキレもなかった。それでも負けなかったのはなぜか。

開幕から無傷の14連勝を飾るなど、誰もが認める球界のエースへと成長した田中将大開幕から無傷の14連勝を飾るなど、誰もが認める球界のエースへと成長した田中将大

 その理由として、ふたつの要因が挙げられます。まずひとつがコントロール。ここで言うコントロールとは、ただストライクゾーンに投げ込むのではなく、ピンポイントで投げ込むという意味です。今シーズンの田中のピッチングを見ていると、どこに何を投げれば打ち取れるということを知っていて、徹底してそこに投げ込んでくる。だから、球自体はいい時と比べてそれほどではないけれども、致命傷にはならない。

 よくホームランを打たれたピッチャーが、「あの球種は失敗だった」ということを言いますが、あれは間違いで、しっかりとコントロールできていないから打たれたんです。重要なのは、何を投げるかではなく、どこに投げるかなんです。田中に関していえば、調子が良くなかったせいか、その意識が他の投手よりも高かった。細心の注意がいい結果につながったのだと思いますね。

 そしてもうひとつの要因が、ストレートです。前半戦は変化球の割合が多かったですが、それでもここぞの場面ではストレートを投げ込んでいました。私の持論ですが、いい投手というのはストレートにこだわりを持っている。田中にしても、球種は豊富だし、すべてがウイニングショットになるぐらい完成度が高い。それでも、いざという時はストレートで押してくる。そういう意味で、田中とダルビッシュ有は非常によく似たピッチングスタイルと言えます。

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