従来のフォームとの決別。昨年の開幕投手、斎藤佑樹が語る「今」 (4ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

 去年、ダルビッシュ有とともにテキサス・レンジャーズにトレーナーとして入団、今年、ファイターズに復帰した中垣征一郎トレーニングコーチとともに、斎藤は今、目指すべきフォームを頭の中で構築しようとしている。そのために、キャッチボールで痛くない投げ方を探し、体幹のトレーニングを通じて、痛みが出ない体を作ることが大事になってくる。現状、まだ本格的なピッチングからは程遠い状況ではあるが、痛みさえ出なくなれば投げられるのだから、逆に考えれば早い復帰もあり得なくはない。ただ、復帰を長いスパンで考えるなら、一時的に痛みの出ない投げ方で投げるのではなく、ずっと痛みが再発しないフォームを固めることが肝要だろう。

「そりゃ、不安です。いつ投げられるようになるのだろうという不安と、早く試合で投げたいという焦りもありますから……もちろん、暖かくなったらブルペンに入って、夏までには一軍で投げられたらなっていう思いもあります。ただ、ずっと野球を続けていく上で今年はいろいろと鍛える期間だと思わなくちゃいけないのかなと思うこともあります。とにかく今は、『肩は治る、肩が治ったら以前よりもよくなる』と、自分に言い聞かせています。最近、周りの人の何気ない言葉が嬉しいんですよ。コーチに『この辺の筋肉がしっかりしてきたな』とか、『このあたりの可動域が出るようになってきたね』なんて言われると、『よっしゃあ』と思ったりします(笑)」

 キャンプの頃は、オフにヒジの手術を受けた小谷野栄一と励まし合って練習してきた。オープン戦の頃は、左肩を痛めていた宮西尚生がパートナーだった。その小谷野は開幕から一軍の試合に出場し、宮西も開幕には間に合わなかったが、ブルペンで立ち投げをしたと思ったら、あっという間に一軍に復帰した。右肩の関節唇のクリーニング手術を受けたケッペルも、ブルペンでのピッチングを始めている。現在、一緒に練習している今年の開幕投手の武田勝も、ほどなく一軍に戻るだろう。

「だから、3月の末はちょっと感傷的になりましたね。ああ、卒業の季節だなと(苦笑)。小谷野さんも宮西さんも、一緒に練習していた人が一軍で活躍すると、もちろん嬉しいんですけど、寂しさもありました。だから、ああ、卒業シーズンだな、なんて思って、卒業の歌を自分で歌っちゃったりしました(笑)。ほら、卒業式で歌う『旅立ちの日に』だったかな。なんとなく、置いていかれている感があったんでしょうね……」

 右肩の関節唇を傷めた斎藤を救ってくれるのは、正しいフォームと強い筋肉、つまり技と体だ。しかしケガをして戦列を離れた選手は、技と体を磨く前に心を折ってしまう。

 不安な中にも見出す希望。

 焦りを覆い隠して決める覚悟。

 寂しさを振り払って前を向く勇気。

 斎藤は今、揺れ動く心と戦いながら、改めて野球と向き合っている。折れない心と正しい技と強い体──この3つが揃った時、斎藤佑樹は必ず、陽の当たる場所に戻ってくる。

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