従来のフォームとの決別。昨年の開幕投手、斎藤佑樹が語る「今」 (2ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

 昨シーズン、プロ2年目にして開幕投手を務め、前半戦、ローテーションの柱として16試合に先発した斎藤だったが、6月6日の誕生日に勝って以来、約2カ月、勝ち星を挙げることができなかった。そして7月29日、大阪での後半戦最初の先発でノックアウトされ、試合後、ファーム行きを通告される。

 酷暑の8月、斎藤はファームのデーゲームで4試合を投げた。

 ただでさえ疲れが溜まる上、クイックモーションの改善を指示され、右の軸に体重が乗り切らないまま、投げるようになってしまった。当然、思うようなボールが投げられず、さらに上体に力が入ってしまう悪循環――それでも、このままでは一軍に上がれないと焦った斎藤は毎日、150球から200球のネットピッチングを続けていたのだ。

 そして斎藤がローテーションに戻ることもなく、ファイターズはリーグ優勝を果たす。さらにクライマックス・シリーズも勝ち上がり、日本シリーズでジャイアンツと戦うことになった。

 栗山英樹監督は、斎藤を日本シリーズで投げさせたいと考えていた。開幕投手を任せながら、最後は一軍の舞台から遠ざかった斎藤に、大舞台を経験させたかったのだ。

 斎藤にそのチャンスが巡ってきたのは、第5戦の8回だった。ここまで2-8と、ファイターズは大量リードを許していた。敗戦処理の色濃いマウンドではあったが、しかしこの時、斎藤は右肩に痛みを感じていた。

「ブルペンの時から痛かったんです。あの日はちょっと休むだけでも痛くなったので、常にキャッチボールをしていました。最初の回をゼロに抑えてからも、イニングの合間は肩を冷やさないようにと、ずっとキャッチボールをしていたんです。結局、2回を投げ終えてアイシングをした時には、いい感じのハリが出ているなと思っていたんですけど、次の日になったら気持ちのいいハリなんてものじゃない。もう、激痛でした。朝起きたら、右腕が上がらない。歯を磨く時も痛くて......でも自分の中では、日本シリーズで140キロ台の後半を投げられたから、これもいい感覚なんだろうなと思っていました。もちろんトレーナーにも報告しましたけど、あんな感覚は久しぶりだったし、肩もいい感覚の時はこうなるんだろうな、そのうち回復するだろうと思って、ちょっと様子を見ようということになりました」

 しかし、右肩の痛みはなかなか回復しなかった。

 沖縄での秋季キャンプが行なわれた11月になっても痛みは回復せず、さすがに斎藤も回復が遅すぎると思い始めた。11月の半ばにはWBCを控えていた日本代表とキューバとの試合が組まれ、斎藤もメンバーにその名を連ねていた。

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