【プロ野球】少しの手応えと多くの課題。4番・中田翔の153試合 (3ページ目)

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • 益田佑一●写真 photo by Masuda Yuichi

 この試合で、ジャイアンツ先発のホールトンが投じたインハイのストレートを振り抜き、レフトポール左に運ぶファウルを打ったシーンがあったが、左手の衝撃を考え、いつもよりポイントを前に置いたスイングになってしまった。その分、球を十分に引きつけることができず、フェアゾーンに入れることができなかった。

 それでも打てるポイントでボールを拾い、3戦目での初ヒット以降、5本のヒットを放った。そして第6戦の6回、3点ビハインドの場面でシリーズ第1号を放った。澤村が「甘く入ってしまった」と振り返った真ん中よりの低め、144キロのストレート。左手の負傷を感じさせない会心の一振りは、レフトスタンド中段へ突き刺さった。起死回生の同点アーチに、東京ドームは静まり返り、ファイターズの逆転優勝の可能性もわずかながら見えてきた。

 しかし、喜びもつかの間。7回裏に1点を奪われ、結局これが決勝点となり、ファイターズは敗れた。この決勝の一打を放ったのは、ジャイアンツの4番・阿部慎之助だった。

「すごく悔しい。まだまだ終わりたくなかった。栗山監督を胴上げしたかったし、自分がもうちょっと打っていれば違った展開になったんじゃないかと思う」

 試合後、中田はそう語った。また、「胴上げを目に焼き付けたか?」の問いには、「別に……」とだけ言い残し、足早に去っていった。「チームが勝ってこそ」――4番の責任を背負いながら戦い続けた今シーズン。その最後に、あらためて4番の重さを感じ、中田翔の長い1年が終わった。

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