【プロ野球】少しの手応えと多くの課題。4番・中田翔の153試合

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • 益田佑一●写真 photo by Masuda Yuichi

ペナントレース144試合とポストシーズンの9試合で4番を務めた中田翔ペナントレース144試合とポストシーズンの9試合で4番を務めた中田翔 日本シリーズ第6戦、日本ハムの4番・中田翔は敗戦の瞬間をネクストバッターズサークルで迎えた。ジャイアンツファンの大歓声が東京ドームを包み込む中、ゆっくりと三塁側ベンチへ引き返す途中、中田はチラリとスコアボードに目をやった。序盤に3点のリードを奪われる劣勢の中、6回表に刻まれた「3」。一振りで同点に追いついた一撃は、手負いの4番として意地の一発でもあった。

 シリーズ終了から2日後、第2戦で澤村拓一から受けた死球で左手甲は骨折していたことがわかった。それでもシリーズでは、死球を受けた2戦目こそ途中交代したが、残りの試合は4番としてフル出場を果たした。栗山監督の「本人には『いって』ではなく『いくよ』って言う。チームも(中田)翔がいないと困るという雰囲気になっている」という言葉を待つまでもなく、中田本人は何があっても出場するつもりだった。

「ここに来て、試合を休むことだけはしたくない」

 そして第3戦、シリーズ初ヒットを放った直後、一塁ベースで手袋を外す時に中田の顔は大きく歪(ゆが)んだ。

「別に大丈夫っすよ。まだ何日かしか経っていないんで、そんなに変わんないですから」

 試合後、左手の状態を聞くと、そう返ってきた。だが、試合前には「痛み止めは効かないし、腫れて力が入らない」と語っていた。もしその状態と変わらないのであれば、決して「大丈夫」なはずではない。それでもチームの命運を握る4番として弱音など吐けるはずもなかった。

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